第百七話 決戦の前にその六
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「志賀直哉にしてもね」
「なれたことが嬉しかったのね」
「武家出身ということもあって」
「それでなのね」
「そうだと思うよ、とにかくこの人はね」
「武士なのね」
「そうだったみたいだよ」
志賀の文学には強さがあると言われている、そしてその強さも武家のそれから来るものかも知れない。
「最後までね」
「そういえば姿勢いいわね」
樹里は今度は晩年の志賀の立っている写真を見て言った。
「この人」
「剣道やってるみたいにね」
「そういうのも見たら」
「武士だよね」
「そのままよね」
「そこ注目してみる?」
上城もまた志賀の写真を見つつ言った。
「今回の課題」
「武士の家の出としての志賀直哉に」
「うん、どうかな」
こう提案するのだった。
「それで」
「そうね、面白そうね」
「作品は、そうだね」
肝心のその作品についてはというと。
「城の崎にてかな」
「代表作の一つね」
志賀直哉の作品の中でもだ。
「あれなのね」
「それがいいかな」
「どうかしら、教科書にも載ってるし」
「他の人も課題にするから?」
「ええ、この作品はね」
その城の崎にては、というのだ。
「外さない?」
「じゃあ他の作品だね」
「志賀直哉って短編作家だから」
その作品は圧倒的にそちらの方が多い。文章的にもかなり読みやすい作家の一人であると言っていいだろう。
「一作一作すぐ読めるし」
「そうそう、志賀直哉って読みやすいよね」
「森鴎外とか作品によっては」
「読みにくいよね」
「舞姫とかね」
森鴎外の初期の代表作だ、彼のドイツ留学時代に実際にあったことを基としているという説は有名である。
「あの作品とかね」
「文章が昔のものでね」
「読みにくいから」
「そうでない作品も多いけれどね」
鴎外も多くの作品がある、読みやすい作品も多いのだ。
「夏目漱石は読みやすいけれど」
「あの人はそうだよね」
「ええ、同じ時代の人でもね」
「けれどその中でもね」
「志賀直哉はね」
「ええ、特にね」
その今の課題の対象はというのだ。
「読みやすいから」
「だからよね」
「うん、城の崎が駄目でも」
この代表作がよくないとしてもというのである、上城は樹里に話していく。
「他の作品があるから」
「それも沢山ね」
「何がいいかな」
「万暦赤絵とか?」
志賀についての資料を読みつつだ、樹里はたまたま目に入ったこの作品の名前を出した。あくまで思いつきだ。
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