暁 〜小説投稿サイト〜
久遠の神話
第百七話 決戦の前にその五
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「遊び人だったってあるわね」
「実際お酒に女の人にね」
「相当遊んだのね」
「そうみたいだね」
 上城は樹里が今読んでいる本とは別の志賀直哉について書かれている本を読みながら彼女に答えた。
「どうやら」
「そうなのね」
「けれどね」
「けれど?」
「この人身は持ち崩さなかったみたいだね」
「遊ぶだけで」
「うん、そこまではね」
 確かに放蕩はしたが、というのだ。
「いかなかったみたいだね」
「じゃあ武士だったのかしら」 
 その生まれらしく、と言った樹里だった。
「この人は」
「そうじゃないかな。ほら」
 ここで上城は自分が読んでいるその本を樹里に見せた。そこには若き日の志賀直哉の写真があったがその写真は。
「この写真見て」
「兵隊さんの服着てるわね」
「凄い誇らしげな顔してるよね」
「ええ、確かに」
 明治の頃の帝国陸軍の軍服を実際に誇らしげな顔で着ている若き日の志賀の写真が何枚かあった、ポーズさえ取っているものもある。
「もう兵隊さんになれたのが嬉しいって感じね」
「どうだって言わんばかりのね」
「徴兵で入ったのね」
「そうだよ」
 ただ後で難聴ということで除隊させられてはいる。
「それで入隊して」
「兵隊さんになれて嬉しいって」
「その頃軍に入るって武士になる様なものだったから」
「だから武士の家の出の人だから」
「凄く嬉しかったんだと思うよ」
「それでなのね」
「うん、そうじゃないかな」
 こう樹里に話すのだった。
「何でも兵隊さんには中々なれなかったみたいだし」
「あっ、それ私も聞いたわ」
「村山さんもなんだ」
「徴兵検査ってかなり厳しくて」
「それに合格しないとね」
「なれなかったらしいわね」
 身体検査で甲乙丙丁に分けられる、そのうち一番よい甲種合格から素行のよい者だけを選んでいたのだ。
「実際は」
「誰でもなれるんじゃなくてね」
「何か北朝鮮見てるとね」
「ああ、あの国はね」
「誰でもって思えるけれど」
「韓国でもね」
 北朝鮮は国民皆兵という今時珍しい国だが韓国も徴兵制である。今太平洋地域で純粋な徴兵制の国は少なくなってきている、大抵は選抜徴兵制だ。
「身体検査受けたらね」
「それでなるって思ってたけれど」
「日本軍は違ってたのね」
「何か、ひいお祖父ちゃんから聞いた話だと」
 上城は彼の曽祖父から聞いた徴兵の話もした。
「ひいお祖父ちゃんのお兄さんが戦争に行って死ぬ思いで帰ってきていて」
「その人から聞いたのね」
「何でも、普通の頃の徴兵だとクラスで一人か二人しかね」
「兵隊さんになれなかったのね」
「殆どなれなかったらしいよ」
「そんなに厳しかったの」
「身体もよくて素行もよくないとだったから」
 このことを樹里
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ