第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
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たのかしら?」
意地悪い顔でベアトリスがティファニアの帽子を睨めつける。
ティファニアは反射的に帽子を手で抑えると小さく背後に下がった。
直ぐに踵が噴水の縁に当たり動けなくなる。
固まり小さく身体を震わし始めたティファニアの様子に、ベアトリスとその取り巻き達は猫が鼠をいたぶるような笑みを浮かべた。
「ベアトリス殿下がわざわざご忠告されたのよ。ほら、直ぐに帽子を取って謝りなさい」
「日焼けするから脱がないのわ知ってるけど、何もずっとと言ってるわけじゃないわ。ほんの数秒程度よ。それぐらいどうって事ないでしょ」
手を伸ばせば届きそうな距離まで詰め寄った取り巻きの少女たちは、意地の悪い笑みを浮かべると笑い混じりの声で帽子を押さえつけ大きく震えだしたティファニアをたしなめる。
帽子を脱げばエルフの耳が顕になってしまう。
もし、自分がエルフの血に継る者だとバレれば、一体どうなるのか。少なくとも歓迎される事が無い事はハッキリと分かっている。良くて学院を追い出され、悪ければここで殺されてしまうかもしれない。
幼い頃、無抵抗の母を無残に殺した兵士たちの姿が脳裏を過ぎる。
血の気が引き、歯が鳴りそうになるのを噛み締めて耐えながら、ティファニアは必死にここから逃げ出す算段を考え始めた。
しかし、いいアイデアが全く浮かばない。
今までは、目撃者に対し虚無の魔法である“忘却”で記憶を奪えばそれで良かったが、ここは真昼間の魔法学院である。
いくら人影がない場所であるとは言え、何時誰かが来るかなど誰にも分からない。
もし、魔法を掛けていた最中に誰かに見られてでもしたら、もう打つ手など何もなくなってしまう。
魔法を使わずこの場を切り抜ける方法。
帽子の端を強く握り締め、ティファニアは自分を囲む少女たちをちらりと見る。
いくら相手が女の子だからと言って、恐々突破できるとは思えない。直ぐに捕まってしまうだろう。そして、捕まってしまえば確実に帽子を取られる。
どうすることも出来ず、ティファニアは帽子を強く押さえたまま動けないでいた。
すると、取り巻きの一人が業を煮やしたのか、ずいっと前へ一歩進み出ると、ティファニアの帽子に向かって手を伸ばした。
帽子に伸ばされる手を避けようと身体を動かすが、追い詰められたティファニアに逃げる場所など何処にも有るはずもない。
ティファニアが更に硬く帽子のつばを握り締め、少女の指先が帽子のつばに触れそうななった瞬間―――。
「―――そこで何をしている」
声が響いた。
「―――シロウさんっ!!」
耳に届いた声が誰の声であるか分かった瞬間、ティファニアは突然の声掛けに固まった少女たちの隙間を縫うように駆け抜けると、声の主である士郎
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