暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
[9/17]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いるベアトリスと言う少女が、何処かの国のお姫様だと言う事は分かっても、その存在が周りにどれだけの影響を与えるのか、周囲に何を求めているのかが理解できていないのである。元々、今までの人生の半分以上を森の中、子供達と過ごしてきたティファニアにとって、敬意を感じる相手やはらう相手もいなかったことから、言葉としては知ってはいても、実際にどのように使うかなど分かる筈もなく。唯一義姉であるマチルダがそれに値する者であったが、その前に家族であると言うことから、敬意を払った対応など思い浮かぶ筈もなかったのである。
 それに加え、魔法学院に来た際、学院長であるオスマン氏より、『トリステイン魔法学院は、皆が平等に学ぶ事が出来る場所である』と説明を受けていたことから、何故そんな学院でそんな尊称で呼ぶ必要があるのかティファニアには理解出来ず、更に混乱を深めさせていた。
 しかし、今の自分がどのような状況に陥っているかは理解できていたため、ティファニアは取り敢えず何とかこの場を収めなければと考えると、綺麗に腰を折ると深々と頭を下げた。

「ごめんなさい。わたし、本当に何も知らなくて、不快にさせるつもりなんてなかったの。何か気に障るような事があったのならお詫びするわ。その、えっと、で、殿下でよろしいのかしら?」

 おずおずと頭を下げると、これで許してくれるかな? と言うように上目遣いでベアトリスを見上げたティファニアは、そこで目を釣り上げて自分を見下ろす少女たちの視線とぶつかり「ひぅっ」と鋭く息を飲んだ。

「本当に礼儀知らずねっ!」
「殿下に対してそのような態度っ! どんな田舎から来たらこんな態度が取れるのかしらっ!」
「まったく、何も知らないと言うのに由緒正しいトリステイン王国に留学に来るなんて! 常識を疑うわっ!」
「ごめんなさい。本当にごめんなさい―――」

 ギャンギャンと吠え立てるベアトリスの取り巻き達に何度も頭を下げるティファニア。最初はティファニアが頭を下げる姿を見て、男子生徒たちの人気を独占した事に対する溜飲を下げていた取り巻きたちだったが、頭を下げる度に激しく上下に揺れる“胸のような何か”を目にする度にふつふつと胸の奥に湧き上がるどす黒い何かに心を犯され更にエスカレートする始末。このままだと一日中責められるのではないかと危惧しまう程であったが、実際は一分も経たずに終わることになった。
 止めたのは取り巻きたちを背後に控えさせた当事者たるベアトリスであった。
 ベアトリスが右手を軽く上げると、まるでスイッチを押されたかのようにピタリと取り巻きたちの言葉が止まった。

「謝るのはいいのだけど、帽子を被ったままでってのはどうなのかしら? 普通は帽子を被ったまま謝罪なんてしないわよ。それともあなたが暮らしていた所ではそんなことが許されてい
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ