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剣の丘に花は咲く 
第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
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腰を上げた。

「こ、ここ、こんにちは」

 慌てすぎて舌を噛みそうになりながらも挨拶をするティファニア。
 頭を下げるティファニアを満足そうに眺めていた金髪の少女は、ティファニアが顔を上げると顎を軽く横に動かした。金髪の少女の意志を汲み取った背後に控えていた五人の中から褐色の肌を持った少女が進み出ると、恭しく金髪の少女に手を向けるとティファニアに問いただした。

「あなた、勿論このお方がどなたかご存知よね?」
「クラスメイトの方とは知っていますが、その、詳しくは……」

 申し訳なさそうに身体を縮めながら謝るティファニアに、褐色の少女は信じられないと声を上げた。

「全く信じられないわっ! こちらがどなたか知らないなんてっ! もうあなたが入学してから十日が経っていると言うのにっ! 大体あなた―――」
「もういいわ」

 軽く右手を上げ声高に非難を叫ぶ褐色の少女を止めたのは、ティファニアの目の前に立つ金髪の少女だった。

「なら、特別に教えて差し上げますわ。わたしはベアトリス・イヴォンヌ・フォン・クルデンホルフよ」

 二つくくりにした金髪の片方を大きくかきあげながら胸を逸らしたベアトリスは、ティファニアの驚愕の声が上がるだろうことに歪んだ笑みを浮かべたが、何時までたっても期待した声は聞こえなかった。訝しげな顔でティファニアを見ると、ティファニアは困ったように眉根を寄せて小首を傾げていた。

「そ、その、よ、よろしく? クンデホルフさん?」

 疑問形で恐る恐ると手を差し出すティファニアの姿に、ベアトリスの背後にいた少女たちから怒声のような声が上がった。

「なに馴れなれしくしているのよっ!」
「全くこれだから田舎者はっ!」
「礼儀を知らなくてないの!」

 ギャンギャン吠える取り巻きの少女を後ろに、悠然と腕を組んだベアトリスは左の口の端を歪めた。

「本当に何もしらないようね」
「ご、ごめんなさい……」
「このお方はあなたのような田舎者とは違って、クルデンホルフ大公国の王女殿下ですのよ。そのような方をよくもまあ、そんな態度で」
「―――っ」

 ベアトリスとその取り巻き達は、顔を俯かせ、言葉に詰まるティファニアの様子にますます勢いづくと、更に詰め寄った
 クラスメイトの女子に取り囲まれたティファニアは、視線を地面に向けたまま混乱の真っ只中にいた。生まれた時から屋敷の中や森の中と、外界から隔絶された場所で過ごしていたティファニアにとって、貴族や階級制度と言ったものは全く無縁のものであった。知識としてそう言ったものがあると言う事は知ってはいたが、それが実際どのような影響を周りに与えるのか、どれだけの影響力を持つのか等といった所は理解していなかった。
 つまり、このティファニアの目の前に
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