第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
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と少女たちが何度も頷く。
男子の人気と憧れの“金色の騎士”の傍にいるということだけで、女子のティファニアに対する当たりは簡単に強くなってしまう。
そこに真実など関係ない。
少女とは感情で動いてしまうものであるからだ。
ティファニアを非難する少女たちの様子を満足気な様子で見ていたベアトリスは、一つ大きく頷くとティファニアが出て行った扉に顔を向ける。
「やはり彼女とは一度しっかりとお話をしなければいけないわね」
ベアトリスの頬が歪み、獲物を前にした肉食獣さながらの眼光が瞳に宿った。
教室から逃げ出したティファニアは、本塔から中庭に出ると、一度振り向き後を追う者がいないことを確認し大きなため息を吐いた。そのままあてもなくフラフラとしていると、何時の間にかヴェストリの広場までやってきていた。人気のない事を知ると、安堵したように小さく息を吐く。安心したのか足に力が上手く入らなくなったので、火の塔の近くにある噴水の縁に腰を下ろした。膝の上に肘を置くと、揃えた両手の上にその細い顎を乗せ空を見上げる。青い空に浮かぶ太陽がキラリと光り、眩し気に目を細めたティファニアは帽子の両端を握り深く被った。視界の半分が塞がれ光と闇が半々に分かれる。
不意に泣きそうになった。
あれだけ憧れていた外の世界。
しかし、実際に外に出てみると想像していたものとは違っていた。
鬱陶しい虫のように近付いてくる男子たち。
何もしていないのに何時も憎々しげな顔を向けてくる女子たち。
楽しく面白いと思っていた外の世界は、実際に来てみると心労や不安だけが重なり息苦しいだけ。
何時も何も変わらず退屈な、でも穏やかだったウエストウッドの森での生活とは比べられない。
ティファニアの脳裏に、不意にトリステインで別れた子供たちの姿が蘇る。
子供たちはどうだろうか?
自分と同じように外の世界でとけ込めているだろうか?
自分とは違ってウエストウッドの森に来るまでは外の世界で暮らしていたからといって、大丈夫とは限らない。
もしかしたら自分と同じように激変した環境に馴染めず心細い想いをしていないだろうか?
子供たちの事を想っていると、何時しか視界が歪み始める。
あっ、と思った時には既に遅く、目尻から溢れた涙が頬を伝い地面へと落ちた。
手の甲で涙を拭っていると、何時の間に傍に来たのか、突然女の声が掛けられた。
「ミス・ウエストウッド」
突然の声掛けに一瞬びくりと身体を震わせたティファニアは、恐る恐るとゆっくり顔を上げる。そこには自分に声を掛けただろう金髪を二つに括った少女の他に、五人の少女が金髪の少女の後ろに立っていた。
自分を取り囲む一団がクラスの女子だと気付くと、ティファニアは慌てて噴水の縁から
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