第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
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傍にいるティファニアに声を掛けようとするならば命懸けであることを男子生徒たちは知っていた。そのことを身をもって理解した少年たちにとって、セイバーは今では美少女転校生ではなく美しき死神であった。だからこそ、そんな死神が傍にいない内に、ティファニアを外へと連れ出し時間を稼ごうとしているのだが、遅延作戦を開始したティファニアに手こずりうまく連れ出すことが出来ないでいた。時間が無為に過ぎ、このままではセイバーがやってくると危機感を覚えた男子生徒の一人が手に大きな白い帽子をもってティファニアの前に出た。
「どうぞ乗馬の際はこの帽子を被ってください。あなたのために特別につばを広く作ってもらいました。帽子の方も、今トリスタニアで流行の羽白帽子なんです。ほら、どうですか、一度でも良いので被ってみてはくれませんか」
「ッ、け、結構です。す、すみません。失礼しますっ」
男子生徒が片手に握った帽子をティファニアに向けて差し出すと、まるで差し出されたのが帽子ではなく刃物だったように、びくりと身体を震わせたティファニアは、被った帽子のつばを両手で握り締めると一気に駆け出し、自分を囲む男子生徒たちの間に出来た僅かな隙間から逃げ出していった。
ティファニアが野生の牝鹿のように軽やかな動きで教室から逃げ出すと、取り残された男子生徒たちは互いに目を合わせると、一斉に先程ティファニアに帽子を差し出した男子生徒に顔を向けた。
「お前のせいで“金色の妖精”に逃げられてしまったじゃないかっ!」
「折角のチャンスだったのにどうするんだっ!」
「お、俺だって声を掛けたかったのを我慢してたってのにっ」
「―――“金色の騎士”が戻ってきたぞッ!!」
ティファニアにプレゼントするはずだった帽子をかき抱いて床に膝を着く男子生徒を取り囲んで喧々囂々と非難を始めた男子たちであったが、ティファニアが飛び出していった逆の方の扉から飛び込んで来た男子生徒の発した言葉でピタリとその動きが止まった。
男子生徒たちは直ぐさまバラバラに解散すると、思い思いの場所に散らばり雑談を始めた。
先程のティファニアとの一件がなかったかのように。
まるで訓練された兵士のような機敏だ動きである。それもその筈、ティファニアに声を掛けて無理矢理何処かへ連れて行こうとしていた等と言ったことが“金色の騎士”にバレれば一体どうなるか彼らは身をもって知っていたからだ。
その“金色の騎士”とやらではあるが―――これもまたセイバーである。
美しい金の髪に優麗な美貌、雪のように白い肌の華奢な身体。
それだけ聞けばどこぞの深窓の令嬢ではあるのだが、セイバーの場合は、暴力行為の問題児で有名だった男子生徒を一発で沈めたやら、貧血で倒れた女子生徒をお姫様抱っこで保健室へと運ん
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