第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
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足が唐突に止まると、肩越しに士郎へと振り返る。正確には、士郎の背中に隠れたティファニアに向けて
「ああ、そうそうミス・ウエストウッド。今回は特別に見逃して差し上げますが、これからはわたしがいる場所でそんなみっともない帽子は脱いでおきなさい。クルデンホルフ大公家の姫たるわたしの前で帯帽だなんて酷い侮辱。いい、今回だけ、次は見逃さなくてよ」
それだけ言うと、ベアトリスは今度こそ一度も振り返らずに本塔へと向かって歩いていく。
ベアトリスの姿が見えなくなると、不意に士郎の背中に軽く何かが当てられた。
「どうした」
「……ごめんなさい。少しだけこうしてていい?」
「ああ」
士郎の背中に額を当てたまま顔を俯かせ黙り込むティファニア。士郎は背中に微かな暖かさを感じながら何とはなしに空を見上げる。真っ青に晴れ渡った空に、白い雲が暢気にふわふわと浮かんでいるの見えた。
一分か、それとも十分か、空に浮かぶ雲が視界の端から端へと流れる程の時間が経つと、背中に感じる暖かさが離れていった。
「もう、いいのか?」
「……うん。大丈夫」
振り返ると、にかんだ笑みを浮かべたティファニアが何かを決心したような目で士郎を見つめていた。
「……何か、手伝える事はあるか?」
「……ううん。これ以上頼るのは流石に甘えすぎだから……うん、本当に大丈夫……何時までも隠して置ける保証なんてないし……良い切っ掛けになったと思う」
胸の前で強く手を握り締めたティファニアは、一度強く頷くと、士郎からそっと離れた。ティファニアが士郎を見上げる。その顔には笑みが浮かんでいた。
「それじゃ行くわ。本当に助けてくれてありがとう。また、ね、シロウさん」
士郎に背中を向けたティファニアは、そのまま小走りに駆け出していった。一度も振り返らず去っていったティファニアの後ろ姿をじっと見つめていた士郎は、先程のティファニアが浮かべていた笑みを思い出す。
決意と覚悟に満ちた、しかし、儚げなその笑顔を。
「断られたか……まあ、セイバーがいるから大丈夫だとは思うが―――」
言葉を切った士郎は、自分に駆け寄ってくる人影に顔を向けた。
「……手数が多いに越したことはない、か」
息を切らして駆け寄り目の前で膝を着いて息を荒げる者たちを見下ろす士郎。
「随分と遅かったな。魔法を使っても良いと言った筈だが、それでもその有様か」
「ぜひゅ、げひゅっ、ひ、ふ、は、はは、そ、空を飛んでも追いつけな、いって、ど、どういう、あ、足の、はや、さを、しているんだい」
「ぎょぶ、ごぶぶ、ぶひゅ、ひひゅうう」
「む、むり、も、もう、ほんと無―――ごはっ」
「ぐ、ふ、げ、げほ、ご、ごぅ、ふ、つ、捕まえ、れるかって」
息も
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