第十二章 妖精達の休日
第一話 言動には注意しましょう
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郎は近づくリゼットとベアトリスを交互に見返すと、顔半分を覆っていた手を動かし顎に当て小さく首を捻った。
「いけないのか?」
「い、いけないのかって……あ、当たり前じゃないのっ! 一国の王女よっ! そこらの貴族じゃないのよ! なら、それなりの対応ってものがあるでしょっ!!」
軽い返答に声を失い、すとんと踵が地面に着いて棒立ちになったリゼットだが、直ぐに被りを振ると人差し指を士郎に突きつけ怒声を上げた。
「全く! 一体どれほどの田舎から来たのかしらっ! 身分の差も分からないなんて、田舎者どころか獣と同じよっ!」
聞く者の顔が白くなる程のリゼットの怒涛のような叱責。その証拠にリゼットの周りにいるベアトリスたちが一歩二歩と後ずさっている。しかし、叱責を受ける当事者たる士郎は、顔色を変えるどころか、何処か楽しげに目を細めると肩を軽く竦めて見せた。
「ふむ。獣、か。それは嫌だな。だがまあ、しかし今は、無闇矢鱈に吠え立てるより人間よりは、相手を見定め静かにする獣の方がマシだと思ってしまうな」
「―――っ! そ、それはどう言う―――」
「あら、随分な物言いね」
露骨な皮肉にリゼットが髪を逆立て、それこそ威嚇する獣のような姿で士郎に食って掛かろうとしたのを遮り前に出る一人の少女。金髪を二くくりにした少女―――ベアトリスは、前に出ると、士郎の姿を上から下までゆっくりと観察するように見回した。
二、三秒程士郎を見回したベアトリスは、ある程度の見定めが終了したのか、両腕を組んで背を逸らすと、自信に満ちた姿で口の端を持ち上げた。
「一体どこの誰かと思ったら、あなた噂の水精霊騎士隊の……えっと、確かエミーヤ・シェロウさんだったかしら? いくら女王陛下の近衛隊である騎士隊の隊長でも、その態度はどうかと思うわよ」
「……エミーヤ・シェロウって」
形容し難いものを口にしたと言うように奇妙に顔を歪めた士郎は、軽く苦笑するとベアトリスと目を合わせると小さく頭を下げた。
「自己紹介がまだだったな。水精霊騎士隊の隊長衛宮士郎だ。残念ながらエミーヤ・シェロウ等といった男が騎士隊にいるとは聞いたことがないな」
士郎の名前を聞いた一年生の女子たちは、驚きに目を見開くとジロジロと士郎の身体を改めて見直した。
水精霊騎士隊隊長エミヤシロウ。
それはこの魔法学院にいる者で知らない者はいないとさえ言ってもいい程の有名人である。真偽の程はハッキリとしないが、七万の軍勢を一人で打ち破ったと噂される程の人物であり。今や様々な功績により女王により取り立てられ、近衛の隊長とまでなった男である。七万は嘘だとしても、少なくとも平民でありながらメイジを軽くあしらう程の実力の持ち主である事は学院の誰もが知っていた。それは入学してきたばかりの一
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