第八章
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第八章
「この様な者に捉えられた若葉殿達も不憫な」
「維盛殿も浮かばれまい」
「これをやろう」
景時はあえてかそんな彼等を制止せず、またその目にこれといって表情を見せることもなく。ここで一枚の陣羽織を出してきたのだった。
「これをな」
「それは何ですか?」
「これは恐れ多くも頼朝公のものだ」
「というとまさか」
「そう、そのまさかだ」
こう権太にも述べた。
「これを鎌倉に持ってくれば何時でも金銀をやろう」
「へえ、それはいい」
権太はそれを聞いてさらに機嫌をよくさせていた。
「じゃあ貰っておきますね」
「そうするといい。それではだ」
景時は周りの者達に若葉と六代を捕らえさせた。そうして二人を連れて行き自分も店を後にするのだった。後に残ったのは弥左衛門の一家だけだった。
「あんた」
「お父っつぁん」
「わかっておる」
弥左衛門は怒りに震えながら女房と娘の言葉に応えていた。
「最早許してはおけん」
「それじゃあやっぱり」
「ここで」
「そうじゃ。権太」
その声で息子に声をかけた。
「最早許してはおけん」
「ああ!?何だってんだ?」
「死ね!」
懐にあった刀、あの小金吾の首を打った刀を取り出してそれで突いたのだった。権太はそれを腹に受けてそのまま倒れ込んでしまった。
弥左衛門はまだ許そうとはしない。なおもその刀を振りかざして言うのだった。
「維盛様の仇、ここで」
「待つのだ、弥左衛門」
しかしであった。ここで聞き慣れた声が店の中に入って来たのだった。
「私は無事だ」
「!?その声は」
「まさか」
「そうだ、私だ」
店の中に入って来たのは維盛であった。何と若葉も息子の六代も一緒である。
「若葉様も六代様も!?」
「じゃああの二人は一体」
「偽者なんだよ」
権太は倒れ込み虫の息の中で言った。
「あれはな」
「偽者!?」
「じゃあ誰なのかしら」
「まずあの首はな」
彼はそこから母と妹に対して話すのだった。
「あれだよ。酢桶にあった首な」
「あの首か」
弥左衛門はその首の話を聞いて合点がいった顔で頷いた。
「あの首のことか」
「そうさ。あの首が誰のものかは知らなかったけれどな」
「あれはわしが取った首だ」
ここで弥左衛門はこう告白したのだった。
「店に帰る途中で倒れていた若いお武家様の首を申し訳ないとは思いながら」
「私の身代わりにする為にか」
「はい」
今度は維盛の問いに対して答えたのだった。
「それで止むを得なく」
「まさかその首は」
若葉はその話を聞いて顔を曇らせて言った。
「小金吾では」
「そうかも知れやせんね」
権太は彼女の言葉に対して答えた。
「あの団子屋で御会いしたお武家様にそっくりでした
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