第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十四話 巡り会し者
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暫しの沈黙の後二人は同時にそれぞれ一つの単語を口にした―――――
「……永……琳……?」
「……お兄……様……?」
――――――それは一つの願いの成就と一つの決断の始まりの合図。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
「厄介な所に入ってくれるよ全く」
伊勢の都を遠めに眺めながら萃香はそう呟いた。流石の萃香の能力でもあの結界は越える事が出来ない。七枷虚空が何時あの都から出てくるか分からない以上此処に残るかどうか萃香は迷っていた。
そんな風に思案していた萃香の首元に突然奇妙な裂け目が現れると同時にその裂け目の中から萃香の喉首目掛けて鉄扇が突き込まれる。
萃香は反射的に右腕でその一撃を防ぎ後方に飛び退く事で襲撃者から距離を取る。すると小さい切れ目は大きく楕円形に開き奇妙な空間から一人の女性が現れる。
「最近お父様の周囲で感じていた薄い気配はあなたよね?見た所鬼の様だけど――――もしかして百鬼丸の関係者かしら?」
鉄扇を広げ口元を隠しながら紫は萃香に問いかける。
「……あんたは確か七枷虚空の娘とか言われてた妖怪か」
「私の事はいいわ、それでどうなの?」
「……あんたの言う通り、って言ったらどうするんだい?」
挑発的な表情でそう問い返す萃香に紫は冷めた視線を向けながら、
「決まっているでしょう?貴方を叩きのめして百鬼丸の居所を吐かせるのよ」
やり返すかのように挑発的な笑みを浮かべそう言い放つ。
「――――は……はははははははッ!!!……舐めてんじゃないよあんた!!」
紫の言葉に萃香は声高に笑い声を上げ、そしてまさに鬼の形相で紫を睨みつける。その怒りに呼応するかのように妖気と怒気が迸った。
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