第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十四話 巡り会し者
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干の怒りを込めながらそんな言葉を吐く紫に虚空は何時も通りの能天気そうな笑顔を浮かべ、
「親にしてみればどれだけ経っても子供は子供だよ。…いや待てよ良く考えたら僕の方が寂しくて夜鳴きするんじゃないのか?それは困るな、という訳で出発前に寂しさを紛らわせよう!さぁ愛し娘よ父の胸に飛び込んでおいで!」
「それじゃぁ神奈子、私は戻るわね」
「あぁ助かったよ、神社の方は任せたよ」
大きく両手を広げる虚空を無視し紫は神奈子に声をかけスキマを開くと振り返る事無くスキマを閉じた。両手を広げた格好のまま固まる虚空と神奈子の間に一陣の風が吹き沈黙が流れる。
「……まぁ此処まで来てウダウダ言っても仕方ないし…行こうか神奈子」
「コイツ認めたくない事実を無かった事にしたッ!!」
「えっ?ナンノコトカナー?ボクニハワカラナイナー?」
「……後で団子でも買ってあげるから元気だしなって」
ボケたフリをする虚空の背中を神奈子は優しく叩きながらそう慰める様に言葉をかけ、虚空の頬を一筋の涙が光を反射しながら流れたのは割りとどうでもいい話である。
□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
伊勢の都の大通りを進む虚空が抱いた印象は『厳格』。まるで天照の気質を体現しているかのような都である。
賑わいはある、しかし七枷の郷や他の都の賑わいと比べると違う感じが否めない。都の管理者でこうも変わるものなのか、と虚空は素直に感心するが真似をしようとは微塵も思わない。
虚空は七枷の郷の前諏訪の都から受け継がれているあの雰囲気が好きだし、なにより自身に厳格や威厳などある訳も無い。幾ら考えても虚空と天照は相容れないようだ。
伊勢の都も七枷の郷と同じ様に中心に神の御所を建てている。暫く歩き目的地である伊勢神宮の鳥居を前まで辿り着いた虚空と神奈子。
七枷神社より広く何より鳥居すら潜っても居ないというのに伝わってくる荘厳さと神々しさ。流石は大和の長が座す場所である。案内するかのように前を歩む神奈子に追随し虚空達は境内へと足を踏み入れた。
神宮の敷地内では格の高そうな神官や巫女が行き来し神奈子や虚空を目にすると深々と頭を下げ去っていく。よく見ると何やら慌しい感じを受け虚空と神奈子は不思議そうに顔を見合わせる。
「?何かあったのかな?」
「……気になるね、虚空悪いけど先に行ってておくれ。あたしはちょっと話を聞いてくるから」
「えぇ〜一人で行かないといけないの〜」
「天照様は此処の一番奥の建物にいらっしゃる筈だから」
虚空の文句を無視し神奈子はそう言うと神官達が集まっている社殿へと足早に向かっていき、残された虚空は仕方なく神奈子が指差した方に見える建
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