第三章 [ 花 鳥 風 月 ]
四十四話 巡り会し者
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それを咎めた所で問題は解決しない。
虚空の意図を理解した綺羅は無言で頭を下げ作業に戻る。そして虚空が再び書類に手を伸ばそうとした所で部屋の入り口の襖が開かれ外から神奈子が入室してきた。
「虚空、急で悪いがすぐに出かける準備をしておくれ」
「出かけるって何処に?」
神奈子が唐突にそんな事を言ってきた為不思議に思い問い返すと神奈子は手に持っていた一通の手紙を虚空に渡す。手紙には―――
『大和の長 天照が命じます。神奈子及び七枷虚空は可及的速やかに我が都である伊勢神宮に参上するように。なお今回七枷虚空には拒否権等は認めぬ旨を伝えておきます』
「……ねぇ神奈子…僕何かしたっけ?」
「……逆じゃないかね?何もしてないから、かもしれないよ」
虚空の問い掛けに神奈子は苦笑いを浮かべながらそう答える。
実は虚空と天照の仲は非常に微妙で危うい関係になっている。
大和に属する神には一年に一度石見(今の島根県)にある出雲大社に集まり親睦を深める行事がある。普段は自分の管轄からあまり動かない神々を交流させる為の宴だ、とは須佐之男の弁。
もちろん七枷の祭神である虚空や諏訪子、神奈子もこの宴に参加しなければならないのだが虚空は祭神になった年の一回しか参加していない。
理由は宴に参加した折り虚空に対し天照が一つの提言、いや命令を課したからである。その命令とは“自分の管理する都より穢れを排斥する事”であった。
天照の妖怪嫌悪は周知の事実であり大和の方針としても至極当たり前の命令だった。加えて天照は虚空が妖怪である紫を娘として扱っている事を知っていて尚虚空にそう命令したのだ。
虚空の事情を知っている神奈子、諏訪子、月詠、須佐之男等はそんな天照の命令に虚空が逆上するのでは、と警戒したが当の本人は、
「ははっ!この七枷虚空、ありがたく拝命いたします!」
天照に頭を下げたのだ。特に諏訪子は驚き七枷神社に戻るまでずっと虚空を罵り続けたが虚空は全く意に介さなかった。
だがどれだけ経っても虚空は天照の命令を実行しようとはせずそれ以降出雲の集会に出席する事もなくなる。
そんな事を続けていれば天照からは催促状の様なものが送られてくるのは必然、時には天照直属の部下が催促状と共に七枷の郷を訪れる始末。だが虚空はその度に―――――
「郷の人手不足解消の為妖怪を使っているのです、用済みになれば町の者達が自ら郷より追い出すでしょう。僕はそれを待っているだけです。多分もう少しですよ、多分」
何時もの胡散臭さがあるヘラヘラ笑いを浮かべながらそんな風にのたまうのだ、そんな事をのらりくらりと百年も続けている。神奈子が言った何もしていない、とはそういう事だ。
「遂に天照がキレたかな?」
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