第七章
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第七章
「それは何ですか!?」
「剣を持たずに斬るとは」
「見るがよい」
老人はここで自分の前に薪を置いた。火に使う薪のうちの一本だ。それを出してきたのである。
「この薪をこのまま斬れるか?」
「このままですか」
「剣を持たずに」
「そうじゃ。一日中剣を持っていても剣道を窮めることはできん」
老人は構えさえ取ってはいない。そうしてそのうえで言葉を続けるのだった。
「こうするのじゃ」
「あっ!?」
「何と!?」
二人はここで信じられないものを観た。何と老人が少し見ただけでその薪が縦から真っ二つになったのだ。まさに剣で両断されたように。
「斬れたとは」
「何もせずとは」
「これが窮めるということじゃよ」
老人の言葉は相変わらず穏やかなものだった。
「では二人共よいな」
「はい」
「御願いします」
それを見た二人にもう迷いはなかった。
「その剣を窮めるということを」
「教えて下さい」
こうして二人は老人に師事した。そうして遂に。彼等は何もせずとも目の前にあるものを斬るようになった。剣を抜かず構えずそれを見ただけでだ。
二人がそれができるようになった朝に。老人はまたしても穏やかな声で二人に告げた。
「見事じゃ」
「ではこれでよいのですね」
「これで」
「そうじゃ。御主達は剣道を窮めたのじゃ」
こう二人に話すのだった。
「しかしじゃ。わかっておるな」
「はい、それは」
「無論です」
二人は老人の言いたいことははっきりとわかっていた。まさに言わずともだった。
「道はまだあります」
「これで終わりではありません」
「その通りじゃ。剣の道は終わりがない」
老人は二人に言うのだった。
「まだはじまったばかりじゃ」
「その通りです」
「窮めてそしてようやく」
「御主達は今それがわかった」
老人はまた二人に告げた。
「さあ、歩いていくがいい。これからもな」
「はい、それでは」
「今より」
凌駕と言葉は老人に別れを告げ山を下りた。その時の二人にはかつての鋭さはなくまさに全てを達観したものがあった。彼等は程なく結婚し凌駕の道場を継いだ。だが必要な時以外には剣を持たず普段はあくまで抜こうとしない。まるで剣道なぞ知らないかのように。
そんな彼等を見て人々はいぶかしむ。そうして口々に問うのだった。
「何故剣を抜かれないんですか?」
「そうです。何故ですか」
「抜く必要がないからです」
「だからです」
しかし二人はそんな世間の声にこう答えるだけだった。
「何故ならです。動作の窮みはです」
「窮みは?」
「一体何ですか?」
凌駕のその言葉に対して問うのだった。
「不動」
「言葉の窮みは無言ですね」
そして言葉も言うのだった。
「だからこ
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