第七章
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そです」
「不動に無言?」
「それは一体」
人々がその言葉の意味をわかりかねているとだった。凌駕はさらに言うのだった。
「剣道の窮みは無刀です」
「無刀が窮みとは!?」
「意味がわからないのですが」
「こういうことです」
彼はここで目の前にあるものを投げた。それは一枚の布だった。
彼は剣を持っていないし抜いても構えてもいない。ただそのひらひらと宙に舞う布を見ているだけであった。
しかし彼は目を一瞥させたそれだけで。布は二つに切れてしまった。それがどうしてなのか、見た者でわからなかった者はいなかった。
「何と、それでは」
「窮めるというのは」
「はい、何を持たないでもこうして斬ることができる」
凌駕は静かに答えた。
「これなのです」
「そうですか。剣を持たずとも斬る」
「そういうことですか」
皆凌駕の今の動きと言葉で納得したのだった。剣を持たずとも斬ることができる、それこそが窮めるということなのだと。今わかったのだった。凌駕も言葉もこの世に並ぶ者のない剣道家と謳われるようになった。しかし二人はこのことに一切何も言わなかった。そしてそれは死ぬまで変わらなかった。これが道を窮めるということだろうか。
求道 完
2009・6・10
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