暁 〜小説投稿サイト〜
その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜2
[12/13]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
か。そう言わんばかりに、その本は言った。彼女には酷な話だろう。部外者である僕でさえ、ショックを受けたと言うのに。
 他の家族は知っていたようだ。誰もが静かに、末の妹の言葉を待っている。
「あのね……」
 そんな中、その少女は静かに口を開いた。




 今まで知らなかった光の秘密に、ショックを受けなかったと言えば嘘になる。私達と距離を置こうとしていたのも、きっとそれが理由なのだ。自分の居場所はここにはない。そう思っていたに違いない。
「光お兄ちゃんは、いつも意地悪な事を言うし、私をからかって遊ぶけど。嘘は言わないんだよ」
 けれど、それだけだ。光は私に嘘をついた事なんてなかった。
「魔物退治には、他の方法もある。そうでしょ?」
『へぇ? 何でそう思う?』
 その本――リブロムは、少し驚いたようだった。根拠はない。でも、思い出した事がある。切っ掛けは何だったかは分からない。何かのルールを破った時、光はこう言って笑ったのだ。それだけは、鮮明に覚えている。
「いつか、俺は掟破りだからなって、言ってたもの」
 皮肉げで、自分自身に呆れているようにも見えた。けれど、どこか、少しだけ。
 私には、誇らしそうに見えたから。
「それに、あの宝石の時も、何も殺してなんかない。だって、あの光はどこか嬉しそうに見えたの」
 光の体に吸い込まれたあの青白い綺麗な光。それは、まるで感謝しているようだった。
『……お前にゃ男を見る目がねえって、相棒がいつも嘆いてる理由がよく分かった』
 呆れたように、リブロムは言った。
『だが、全くねえわけでもないらしいな。確かに相棒は『掟破り』だ。元人間の魔物を何人も救済したからな。おっと、救済ってのは、元の人間に戻すってことだ。こいつができるのも魔法使いだけだけどな』
 ほら、やっぱり。そう言いかえそうとしたが、それは言えなかった。
『だが、相棒が言った『掟』ってのはどの事なんだろうな? 言い忘れたが、魔法使いの結社ってのは最終的に三結社が残る。それぞれが異なる信念を掲げ、だからこそ異なる『掟』を掲げている。魔物を皆殺しにしろってのはそのうちの一つにすぎねえ。それに殉じる事だって、他の結社から見れば充分『掟破り』なんだぜ?』
「……それでもだよ。私は光お兄ちゃんを信じてる」
 迷いがない訳ではない。怖いと思っているのも事実だ。けれど、光は今まで沢山優しくしてくれた。それを誰にも否定はさせない。覚悟を、決めた。
「これがあれば、私にも魔法が使えるんだよね?」
 知らない間に私が握りしめていた赤い宝石。あの時、このフェレットが私に託そうとしたこの宝石があれば、私にも魔法が使える。魔法が使えれば、光の力になれる。光を人殺しになんてさせない。
 ありったけの覚悟を込めて、その宝石に願う。
「お願い
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ