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その魂に祝福を
魔石の時代
第一章
始まりの夜2
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 その瞬間、自分が真っ先に考えたのは代償で耳がイカレたままに違いないという事だった。――が、それはおかしい。自分が被っていた代償として捧げたのは皮膚だけだ。それ以外の機能に影響は出ない。
 もう一度言ってくれるか?――何かを聞き間違えたのだろう。強引に自分を納得させてから、問いかけた。
「私達の家に来ないか?」
 一言一句たがわず、その男――ついさっき救済したばかりの半死人は、そんな世迷い事を言った。救済が巧く行かなかったと考えた方がいいのだろうか。ただの火傷だと思って手を抜いたつもりはなかったのだが。
 自分の素性については、一通り話したはずだった。
 実際のところ、話す義理はなかったが――いや、リブロムを届けてくれた相手だ。それくらいの義理はあるか。もう一人の女はともかく、この男はこちら寄りの人間だ。多少血生臭い事を話したところで問題あるまい。その判断から、この男にだけは話した訳だが。
 もちろん、全てではない。たった今思いだしたばかりに事もあるし、まだ思い出せていない事もある。忘れている事にすら気づけていない事もあるに違いない。その中で、さらに胆略化した以上、語った内容というのは自分という存在のごく断片に過ぎないが。
 俺は異能者で、人殺しで、不死の怪物だぞ?――呻くように告げていた。魔法使いはこの世界に存在していない。御神美沙斗と行動を共にしていた以上、この器になってからも何人殺したか分かったものではない。そして、たった今取り戻した事実。
 そもそも、自分は人間ですらない。死体にとり憑き蘇った時点でまともな人間だとは思っていなかったが――どうやら、想像以上の怪物だったらしい。
「もちろん、ちゃんと聞いていたよ。にわかには信じがたい事だがね」
 ただ、美沙斗の相棒だったと言う時点で人殺しだと言う事は予想していた――自嘲するように、その男……御神美沙斗の兄は笑みのようにも見える表情を浮かべた。
「それに関しては、私も他人の事はとやかく言えない身だ。異能者……君が魔法使いでなければ、私は死んでいた。感謝する事はあっても嫌悪する訳がない」
 それはどうだか。命を救ったくらいで魔法使いへの嫌悪が消えるとは思えない。……たった今取り戻せた範囲での常識に従うなら、だが。
「それに、君が怪物のようには見えないな」
 確かに代償による損傷を癒すのは容易ではない。が、普通の傷なら話は別だ。思い切り掌を斬り裂いたところで、その気になれば即座に修復していく。たった今見せた通りに。
「君の体質は分かったよ。だが、それは怪物の証明ではない」 
 真意が読めず、視線だけで問いかけるとその男は笑ったらしい。
「そもそも、怪物が人を助ける訳がないだろう?」
 反論する言葉が無かった訳ではないが――これ以上付き合うのは時間の無駄だ。逃げ
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