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まぶらほ 〜ガスマスクの男〜
第九話
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り人前で晒すのはまだちょっと無理があったかな。


「――ぶはっ!」


「ご主人様!?」


 唐突に鼻血を出して倒れる俺にリーラが駆け寄ってくる。


(俺、ちゃんと笑えてたかな……?)


 意識を失う寸前で過ぎったのは、そんな考えだった。





   †                    †                    †





「……あ〜、テラ恥ずかしす」


 アクシデントはあったものの無事誓約も終えた。


 あの後、鼻血を出して倒れた俺は数分で意識を取り戻し、心配する皆を余所に自室に籠っている。


「うぅ〜、やっぱり恥かしいよぉ〜……!」


 超久々にマスクを外したが、やはり耐えられなかった。


 これが、俺が人前で常にマスクをつけている理由。


 簡単に説明すれば、超上がり症で超人見知りなのだ。


 人と面と向かい合うと赤面してしまい、挙動不審になって上手く喋れない。


 男でも駄目なのに女の子が相手だともう無理。赤面から始まり頭痛、吐き気、動悸、眩暈などの症状が発作的に起こり仕舞いには失神してしまう。


 そんなことで日常生活を送ることすら困難だったため、普段からガスマスクをつけて生活しているのだ。


 マスク越しになら不思議とコミュニケーションが取れるのだから不思議なものだ。


「だけど、これからはそれじゃあいけないんだよな……」


 手の中にあるマスクを見ながら呟く。


 メイドたちの主になったのだ、この欠点はなんとしても克服しなければ不味い。色々と。


 メイドたちだけならまだしも周囲の目もある。おかしな主だと思われたら皆にまでいらん目で見られてしまう。それは避けたい。


「ご主人様、よろしいですか?」


「ひゃい! ど、どうぞ……」


 ノックの音とともに、リーラの声が。思わず変な声が出てしまった。恥ずかしい……。


 反射的にマスクを被りそうになるが、ぐっと意志の力で堪える。もうマスクは卒業したんだ! リハビリしないといけないんだ!


 でも、せめてシーツで目元まで隠すのは許してね? いきなり顔モロ見せとかハードル高すぎだから。


 腰掛けていたベッドに横になり、シーツで目元まで隠す。


「失礼します」


 頭を下げたリーラが入室してきた。手には果物が入った籠を下げている。


 見たところ、彼女一人のようだ。


「お加減はいかがですか?」


「も、もう大丈夫……」


 側まで寄ってきたリーラにどもる俺。


「それはようございました」


 
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