番外14話『激情晩』
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右足の痛みを無視して、夜の宮殿を歩く。
外ではずっと雨が降っていた。もちろん、ダウスパウダーによる人口雨なんかじゃない。天然の、誰かに強制されることのない本物の雨だ。
「……」
全てが終わっていた。
今頃みんなは大部屋のベッドで全てをやり遂げたことによる達成感と、限界以上に頑張った疲労感でグースカと寝ている。部屋を出る時、ビビはまだ雨を見ていたいと言って寝てなかったけど、今はどうなんだろうか……いや、どうでもいいか。
「……ここか」
着いた。
ここは宮殿の門前。ルフィとクロコダイルを2回戦を繰り広げたという場所だ。
地面が割れて、あらゆる全てのものが砂に還っている。他の戦闘痕は雨が洗い流してしまったのかもしれない。俺が見てわかるのはそれぐらいだ。けど、それでもこの光景を見ればわかる。ルフィがここで死闘を繰り広げたということぐらいは。
国王さんの言葉を聞く限りは決着はここで着いわけじゃなさそうだから、たぶんルフィはここでもクロコダイルに一度負けたんだろう。それでも結果的にクロコダイルを倒したルフィはただただ『流石』の一言に尽きる。
「ほんと……さすがルフィだ」
呟いて、自分の使い物にならない右拳を見つめる。
「……」
もっと他に戦闘痕がないか、死闘の跡が見たくて屋根がないところまで足を進めてみる。もちろん傘は持っていないからずぶ濡れになるけど、今の俺にはきっとそれぐらいが丁度よく感じられた。
「ま……ないよな」
戦場跡で周囲を見回してみるけど、やっぱり戦闘痕はもう残っていないからここでどういう戦闘があったのかはこれ以上の想像はつきそうにない。
「……なにやってんだろうな、俺は」
これ以上に雨に濡れたら明日チョッパーとかに怒られるんだろうか。
そんなことを考えるかたわら、足は動かない。
座り込んで、ただ周囲を見回して、雨の降る空を見上げてみた。
真っ暗な夜にどんよりと空を覆う雲は、まるで俺の心を表しているみたいで、それがまた嫌になる。
王下七武海の師匠を超えると、俺は師匠に誓った。
ナミを守る強さを得ると、俺自身とナミに誓った。
ゾロのような強さを得たいと、俺はリトルガーデンを出たときに自分に誓った。
ルフィたちの仲間だと、左腕に巻いた包帯と×印で誓った。
その結果が――
『実力もないくせに戦闘中によそ見をするただの負け犬だったとはな』
クロコダイルの言葉を思い出した。
――これだ。
情けない。
情けなさ過ぎて、頬を伝う何かに気付いた。
「……?」
雨じゃない。
雨よりももっと熱いなにかだ。
……じゃあ、なんだ?
考えて、すぐにわかった。
「……なんだこ
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