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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 後日談 あいつの分まで……
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て…………母さんが目を覚ますことはなかった。









「約束も守れずに……ごめんなぁ……勇人……ダメな兄貴で…………」


MK23の銃口を頭に当て、引き金に指を掛ける。


「…………」


目を瞑り引き金を引こうとした瞬間――


誰かに後ろから抱きつかれた。


(誰だ……? それに……温かいな……)


『兄さん……僕の分まで……生きてね』
「――!? 勇――」


勇人の声がして、振り返ると温もりは消え、声の主はいなかった。



「…………」



勇輝は立ち上がり、勇人の体を壊れ物を扱うかのように優しく持ち上げる。


「そうだな……ちゃんと、お前の分まで生きないとな……」




暗い裏の世界から明るい世界へ歩き出す。

















「勇輝……勇人……」
「よう……武敏」


路地を抜けるとよく知った顔が待っていた。


「勇人は……」
「ああ、帰ったよ。親父と母さんのところへな……それより……“裏”は?」
「ああ、もうじき消えるさ……何人か逃がしちまったがな……」
「そうか……まあ、残党の殲滅には俺も手を貸す。勇人も……そうしただろうからな」
「すまない……助かる……」
「いいって事よ……だが、その代わり……頼みがある」
「なんだ?」
「勇人を……きれいな景色が見える所に埋めてほしい」
「……分かった」
「頼む」

武敏に勇人の体を預け、俺は立ち去って行った。












「あ、勇輝さん……」
「ん? よう、香里」


クラスメートの立川香里、衛生科Aランクにして秘蔵っ子だ。衛生武偵は、現場で治療を施した相手に事後で高額な請求をすることができるが、彼女は高額な請求は一切しない。金をとるにしても働いていれば十分稼げる額しか請求しない。おまけにAランクなだけあって腕もいい。噂によればSランクにも届きそうとか……


「怪我してるじゃないですか……ちょっと見せてください!!」
「お、おい、ちょっと、俺は今無一文だぞ」
「請求なんてしませんから!!」
「それなら安心だ」

「あ……左手……刺されたんですか?」
「ああ、でも、痛みなんぞ感じねえから大丈夫だ」
「ちゃんとケアしないとだめです!! 傷口から菌が入ったら大変なんですよ!」


鞄から救急箱を取り出し、中から消毒液と綿棒を取り出す。


「ちょっと痛いかもしれないけど我慢してくださいね」
「はいよ」





「うん。後は包帯を巻いて……」
包帯を取り出し、丁寧に巻いてくれる。


「一応、応急処置
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