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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 後日談 あいつの分まで……
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が辿り着いた先には……頭と首を刺され倒れている男と……壁を背に……眠るように座り込んでいる少年がいた。



「勇……人……?」


少年に近づきながら、弟の名を呼ぶ。しかし、何も答えない。
少年のすぐ傍へ来て、しゃがみ込み……肩を手で優しく叩く。 しかし、少年は反応しない。


「おい……こんなところで寝ていたら……風邪ひいちまうぞ……」


勇輝は水たまりに浸されている勇人の手を握る。


「………………」


勇人の手は冷たくなっていた。しかし勇輝には分かる。この冷たさは……水に浸ってたから冷たいわけではない……命の灯が消え、命の温もりが消え失せていた冷たさだったのだ。


「勇人……どうして……どうして……死んでんだよ……刺し違えでもしたのかよ……自分が死んじまったら……相手を殺しても意味なんてないだろうが……」


「普通……末っ子は……最後に逝くもんだろう……なんで……兄貴より先にくたばってんだよ……なんで……満足そうに笑っているんだよ……」


勇輝は微笑んで眠っている勇人に抱き着き、涙を流し始める。


「親父や母さんに……お前の事を……「守ってあげて」って言われてたのに……」





昔の記憶が頭をよぎる。






赤子の産声が響く。自分の弟となる子が生まれたのだ。すぐに母さんが抱いている赤子の顔を覗き込む。


「わあ……僕も生まれた時はこんな顔をしていたの?」
「ええ、そうよ……」
「勇輝もとうとうお兄ちゃんだな」
「うん!! 僕がこの子のお世話をする!!」
「ふふ……優しいお兄ちゃんだね……勇人」
母さんが泣き疲れて眠っている赤ちゃんに優しく語りかける。


「ゆうと?」
「そうよ、この子の名前だよ」
「漢字で書くとこうだな。勇輝の勇と同じだ」
父さんがペンと紙を取り出し、何かを書いて見せてくれる。


「ほんとだ……最初の字がおんなじだ……」
「それより、勇輝はこれからは大変だよ? 勇人を守ってあげないといけないんだから」
「うん!! 約束する!! 勇人は僕がずっと守ってあげる!!」
「ほんと? じゃあ、勇人と指切りをしないとね」
「うん!!」


眠っている勇人のとっても小さい小指に自分の小指を引掛ける。


「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ーます、指切った」


優しく上下に振りながら唱える。


「よかったね、勇人……お兄ちゃんが守ってくれるってさ……ゴホッ! ゴホッ!」
「母さん!?」
「もう休め、勇人を産んで疲れてるんだから」
「そうね……そうさせてもらうわ……お休みなさい」


そう言って母さんは微笑みながら勇人を抱いたまま眠った。


そし
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