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絶望と人を喰らう者
第二話 三
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奴に向けて発砲した。


 一方その頃。


 モノクロのような霞がかった風景。
 そこは、とある建物の部屋で、一人の白衣を着た男が、十七歳くらいの少年に話しかけていた。
 白衣を着た男は無言で彼の手を取り、そのままどこかに連れて行こうとする。
 少年は訝しげの顔で、彼に話しかけた。

「俺をどこに連れて行くつもりなんだ? アリスは、彼女はどこ?」

「君の父親もアリスもここには居ない。もし、君が大人しく付いてくるのであれば二人に会わせてあげるよ?」

 白衣の男はそう答えると、少年は顔を俯かせて、頷く。

「本当か? …………分かった」

 それから場面が代わり、手術室。

「さてと、じゃあそこへ寝てくれ」

「この台か?」

「そう、そこだ」

「一体俺に何をするつもりなんだ?」

「ほんの少し、君の身体を調べるだけだ。なぁに、心配するな、すぐに楽になる」

 手を引いた男は彼を手術台に少年を寝かせると、二人の助手に命令をした。
 助手は彼の命令にこくりと頷き、少年の腕に注射器を刺す。
 すると、少年は全ての感覚が途絶え、意識を深い闇の中へと手放した。


「俺の頭の中に映ったのは一体何だ?」

 人間の姿に戻っているナナシは、頭を抱えて、先程流れた映像について考える。
 多分、記憶と呼ばれるものだろうっと、彼は考えるが、自分にはあんな事が遭ったなんて頭には無く、さっぱり分からない。

「そういえば、喋れるな、俺」

 彼はそう抑揚の無い声で、自分が予想していた事をぼそっと呟いた。

「以前に食べた時、俺は…… 何故か何でも食べなくはなったな。きっと理性というのかな? 多分それだろう」

 ナナシは更に独り言を続ける。

「という事は、俺が次に手に入れたのは知識…… か? 多分頭の中に流れた映像を見る限り、俺は人間だったみたいだな」

 ナナシは自分の事なのに、客観的にそう結論付けると、歩きながら続きを話した。

「今まで言葉とか分からなかったから、少し便利だね、知識。ところで何故俺はアリスを守らないといけないんだろう? 分からないけど、きっと大切な事だと思う。ともかく……彼女はどこだ?」

 彼は改めて、辺りを見てからアリスの姿を探す。しかし、彼女だけで無く、人の気配自体が無い事に首を傾げた。
 ナナシは目を閉じて耳を澄ませる。
 すると、ここでは無い少し離れたところで物音、銃声、他にも爆音や悲鳴、それとアリスの声が聞こえた。
 彼は彼女の危機を察して、すぐに動いた。


「ぎゃあああ」

 デセスポワールの身体から出ている無数の手に捕まった兵士は、いとも簡単に四肢を引きちぎられ、地面に捨てられる。
 他にも生き残った傭兵や兵
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