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絶望と人を喰らう者
第一話 二
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 彼女は涙を流すのを堪え、心配させないよう、ナナシに作り笑いを浮かべた。

「きっとパパもわたしをさがしているよね、きっとそう!」

「うん」

「ナナシもいるからさびしくないし、ゆっくりパパをさがそう!」

 何故か、ありすのパパを探す事になってしまったがナナシは別に何とも思っていなかった。
 ただ、目的がブラブラ歩く事からありすのパパを探す事になっているだけだ。
 ナナシが『探す』」という単語をしっているかどうか分からないが、彼はありすの言葉にこくりと頷いた。

 それから数分間、ありすと二人で歩き続けていると、突然ナナシが動きを止める。

「どうしたの?」

 ありすはいきなり歩くのをやめた彼に不思議に思い、尋ねた。
 しかし、ナナシは何も答えない。
 一体どうしたんだろう? っという風にありすは首を傾げたその時。

 大きな破裂音がどこかから響き、ナナシの胸に風穴を開けた。

「え……?」

 ありすは自分の顔に弾と一緒に飛び出したナナシの血が少量付着し、驚愕の瞳で彼を見る。
 ナナシは無表情で胸に空いた穴をぼーっと見た。
 そして再び火薬独特の破裂音が何度も響く。
 音が鳴ると同時に、幾つもの穴がナナシの身体に作られていき、その度に彼の身体から血が噴き出した。
 最後の一発が鳴り終わると、もう驚いた鳥の羽ばたき音以外何も音が鳴らなくなり、ナナシはドサッと倒れる。

「……あ」

 ありすはナナシが倒れたと分かった瞬間、顔を真っ青にし、それからしゃがんで揺らし出す。

「ね、ねぇ」

 しかし、いくら揺らしても彼はピクリとも反応しない。
 ありすは真っ青な顔をしながら、ナナシの身体を揺らすのをやめた。
 それから、辺りをキョロキョロ見渡し、自分の身体を隠す為に壊れた車の下へ潜り込んだ。

 少しして。

 複数の足音が聞こえてきて、話し声みたいなものが徐々に近づいてきた。

「お、いたぜいたぜ!」

 やってきた人間のグループの内の一人が、目当てであるナナシの方へ駆け寄って歓喜の声をあげる。

「おぉ、こいつはどっかの科学者だったのか! ひひひ、結構良い物を持っていたりしてな」

 男は無用心にナナシの服やら身体を探り始める。ありすはそれを震えながら見ていた。
 何故なら、ありすは知っているのだ。

 ナナシが化物になった時の姿を……

 ありすは天羅と兵隊が昆虫の化物と戦っていたのを、瓦礫の下からこっそり見ていて、ナナシが現れてあら化物になる姿も目に焼き付けていた。
 それゆえに、ありすはすぐさま離れたのだ。
 もしかしたら、あのままあそこに居ればナナシは自分を襲うかもしれないから。

(ナナシ…… もしかしてまた、こわいのに
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