第一話 一
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う思っていた。
だが……
天羅は突然背後から足音がした気がして、すぐに銃を構えて振り向く。
すると、そこには血まみれになっている科学者の服を着た少年が立っており、虚ろな瞳で天羅の事を見ていた。
一体何故こんなところへ? しかも、驚くべき事に彼はこんな化物が居る場所に無防備で丸腰の状態でいる。
天羅は何故だか嫌な予感がした。今まで化物と戦い続けた兵士の直感と言ってもいいかもしれない。
「おい、早く逃げろ!」
逃げるように促すが、少年はボーッとこちらを見て微動だにしない。
化物達に噛まれているような気配は無いし、変異もしていない。普通の人間の筈だ。
デセスポワールに噛まれた人間は奴らの仲間になるか、歩く屍、つまりゾンビになってしまう。
しかし、少年は変異していないし生きている。
天羅は動かない彼にイライラし、仲間も逃げたから一か八か少年を担いで逃げようかと考えたその時。
化物が少年の方へ顔を向けた。
「まずい!」
天羅はすかさず銃を発砲し、自分の方へ敵視を向かせようとする。
けれど、化物は全く天羅の事を見向きもせず少年の方へ猛然と走り出した。
「早く逃げろ少年! 殺されるぞ!」
天羅は必死に叫ぶ。
だが、少年は振り向くどころか、化物の方へ顔を向けてじっと見ていた。
(あいつは死ぬつもりか?)
彼はもう助けられないと確信すると、諦めて自分も退却をしようと化物と少年を視界に入れながら離れようとした。
その時……
「なっ!?」
突然、少年の身体が肩から裂けた。
少年がまるで一太刀で切られたように大きく裂け、辺りに血の雨を降らす。
そして、彼の身体は糸が切れた人形のように倒れた。
天羅は突然の事に呆然とし、口を開けたまま少年の凄惨な姿を見ていた。
(一体いつ……どこで奴らにやられたんだ!?)
一部始終見ていたから天羅は分かるが、あの昆虫みたいな化物では断じて違うと思った。
しかし、ここには他に化物の姿が今のところ無い。
もしかして、隠れているのだろうか? 彼はそう思い、廃墟になっているビル等を目で確認する。だが、何も変化は無かった。
もう一度倒れた少年の方へ視線を戻す。
すると、そこには先程まで居なかった、新しい化物の姿があった。
「!?」
頭部は前後に細長い形状をしておりエリマキトカゲみたいな傘が付いている。目は無い。口には凶悪な大量の牙が生えており、身体は爬虫類を思わせるような四足で尻尾の先端には切れ味の良さそうな刃が付いていた。
そいつは刃のような尻尾を振り回して唸り声を上げ、昆虫型の方の化物へ威嚇している。
天羅の仲間を殺した昆虫型の化物も、四本足の化物へ大鎌を振り上げ
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