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第一章
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さんらしくてね」
「いいんだな」
「本当に独楽と凧だったら何でも作れるからね」
「そうだよ、何だって作ってみせるさ」
 また言うのだった。
「何でもな」
「いいね、じゃあまた明日も頼むよ」
「おうよ、またすげえ独楽や凧を作ってやるさ」
 彼は自分に作れない独楽も凧もないと思っていた。そうして日々その二つを作って楽しんでいた。しかしそんなある日のこと。彼は饅頭を買いに外に出ていた。
 実は彼は饅頭が好きだ。甘いものは全体的に好きである。その中でも饅頭は特に好きだ。その好物の饅頭を買ってそれを楽しもうというのだ。
 馴染みの店にまで買いに行こうとするその時だった。ふと道で凧で遊んでいる子供がいた。彼の作った凧ではないがその凧で明るく遊んでいた。
 側にはその子供の母親だろうか。お歯黒をした女がいた。その女が子供に対して明るく笑ってそのうえで言っていたのだった。
「本当に凧が好きだねえ」
「うん、大好きだよ」
 子供は凧をあげながら楽しく笑っている。凧は空高くあがっている。どうやら凧をあげるのがかなり上手な子供であるらしい。
「こうやってあげるのがね」
「それにしても上手だねえ」
 女も子供が凧を揚げるのを見て感心したように述べた。
「凧をあげるのが。本当にね」
「いいことだよ。凧をあげるのがいいのはね」
「けれどさ、おいら」
 子供はここでふと言うのだった。
「自分も凧に乗ってみたいんだけれど」
「あんたがかい」
「そうだよ、おいらも空を飛んでみたいよ」
 子供はその空に高々と掲げられている凧を見て女に話すのだった。
「空を。凧でさ」
「おやおや、そんなのはできないよ」
 しかし女はそれは笑って否定するのだった。
「そんなのはね。絶対にできないよ」
「無理かな」
「無理だよ、無理」
 こう言ってまた否定するのだった。
「そんなの。できっこないよ」
「そうなんだ。無理なんだ」
「今凧を自分であげてるだけで我慢しときな」
 女は今度は子供に優しい声で告げていた。

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