邪炎の産声
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生を決定付けた最悪の神の名である。
さて、クトゥグアについて語れることは少ない。姿形はどうだったかということはできない。なにせ、俺は奴と会っている間、奴自身に魂ごと灼かれていたのだから。一ついえることがあるとすれば、奴は紛れもなく邪神であるということだけは断言できる。なにせ奴は俺の滑稽さを嘲笑っていたのだから。
奴の言うところによれば、そもそもあの儀式は誤ったものであり、完遂したとしても本来なら奴を招来するどころか、似て非なるものを呼び寄せることになっていたというのだ。つまり、あの狂人の殺し方にも、犠牲となった生贄達も、そして今生の両親の死ですら無意味だったというわけである。それにも関わらず奴が来たのは、この世界に天敵であるニャルラトホテプがいると感じたが故である。そして、偶々普通とは違う魂を持っている人間がいたから、呼び寄せてみたというのが真相らしい。
奴は俺の誤解と真相を知っての驚愕を嘲笑うと、俺に命じた。この世界にいるニャルラトホテプの邪魔をしろと。手段は問わない。いかなる形でもいいから、ニャルラトホテプにいっぱい食わせろと。俺に拒否権などない。奴は俺の魂にその命令を刻印として奴自身の印と共に焼き付けたのだ。逆らうことなどできようはずもない。俺はこの世界における奴の走狗として生まれ変わされたのだから。
そうして、ふと気づけば俺は炎の海にいた。相変わらず状況はちっとも良くなっていない。俺は少女の亡骸の下敷きになったままだし、最早誰のものともわからぬ血の海に塗れている。五感が訴えるものは最悪なものばかりで、むしろ火が放たれ分、状況は悪化したというべきだろう。
「邪教の儀式は寸でのところで止めることができたようですね。後は一切合切を火で浄化してしまえばいいでしょう。メシア様の降りる地に穢れがあってはなりませんからね」
嘲るような声のほうに目を向ければ、炎を放つ天使を両脇に侍らせた白の法衣の女の姿があった。表情は遠すぎてよく見えないが、汚らわしいものを見るような顔をしているのは容易に想像できた。
いや、今はそんなことは重要ではない。あの女はメシアといった。しかも天使が実在するときた。クトゥグアが実在した以上、他にもいておかしくはないが、こうも簡単に姿を現しているとなると、俺の脳裏に浮かんだのは、前世において遊びつくしたあるゲームだった。
女神転生シリーズ、神仏・妖精・精霊等の類を一緒くたに悪魔として扱い、それを悪魔召喚士たる主人公が仲間ならぬ仲魔として使役し、敵を倒していくRPG。その中で、メシアの降臨を至上命題に掲げる宗教組織メシア教。今の状況は、それにピタリと嵌まり込んでいたのだ。
そこまで考えて、不意に笑いがこみ上げてきた。なんだそれは?ゲームと同じ世界観の世界に転生など、ありふれ
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