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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 最終話 勇は眠り、天は泣く 
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は強く降る。勇人に「寝るな」と訴えるように……。

しかし、勇人の体はすでに雨の冷たさを感じてはいなかった。


「帰ったらどうしようかな……雄一……あれじゃ、確実に入院だよな……よし、雄一の見舞いにでも行こうかな……いや、そのまえに僕も病院で治療を受けないと……いきなり、胸にナイフが刺さっている人が病室に入ってきたらびっくりしちゃうからな…………」





雨はさらに強く降る……。





「……? おかしいな……雨が降っているのに……音が聞こえない……それに………………何だか……眠くなってきたし…………早く……帰ろうっと……」



勇人はなんとか立ち上がろうと、体を持ち上げようとするが、なぜか力が入らない。




「あれ? なんでだろう? 体が、思い通りに動かないな……僕の体は……反抗期でも迎えたかな?」




「……………………」



勇人は不思議に思うがすぐに察した。





「そうか……もう…………。まあ、散々人の命を奪って来たんだ。文句なんて……言えないか……
裏で生まれて……裏で消える…………諜報員にぴったりの死に方だな……」





少しずつ……意識が遠のいていく……。





「…………みんなに会えて……よかったよ…………ありがとう…………旅行……一緒に行けなくて……ごめん…………兄さん……僕の分まで……生きて……ね……」






「さあて……寝る……か…………」






次第に視界が暗くなっていく……。







そして――








バシャ……









勇人の手は、水たまりができている地面に落ちた。



雨は先程よりもっと強く降る。まるで泣いているかのように。




しかし、天が泣いているのに対し、勇人は笑顔を浮かべ……静かに眠っていた。


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