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落ちこぼれの皮をかぶった諜報員
 最終話 勇は眠り、天は泣く 
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『あの、天原さん、あまり無理はしないで下さい』





『ちょっと! 勇人君!? しっかりして!』





『よし、男同士の約束だ!!』





『もう3年か……早いもんだな』





『まあ、その、あれだ……でかくなったな、勇人』

















『勇人!!』




「……?」




誰かに呼ばれた気がした。




(今の声は…………? ……そうだ、まだ終わっちゃいない!! 僕はまだ生きている!!)




ガシッ!!



勇人の左手が相馬の腕を掴む。


「! 貴様……」


「はあ、はあ、痛え……だが、こんなところで死んでる場合じゃ……ないんだよ!!」


勇人は右手のナイフで相馬の右腕を渾身の力で刺す……否、ナイフを深く差し入れ、そのまま抉る。


「ぐあああ!!」


相馬は今までとは比べ物にならない痛みに大きく怯む。そして――
勇人は左手で相馬の襟を掴み、相馬を自分の方へ引き寄せ、ナイフを相馬の首へ突き刺す。



「ぁ、あぁ……」



勇人は相馬の首からナイフを引き抜く。






「これで、終わりだあああ!!」






言葉と共に勇人はナイフを逆手に持ち替え、両手で握りしめて再び、相馬の頭に振り下ろした。





ザシュッ!!





相馬の体が、魂が抜けたように崩れ落ち、二度と動くことはなかった。







「やった……のか……」




「…………ぐう!」


戦いが終わり、緊張が解けると胸の激痛が再び襲ってくる。
勇人は近くの壁に寄りかかり、手で傷口を押さえながら座り込んだ。


「…………」


自身の体からどんどん血が溢れ出す。





ポタッ





「? 雨……か……」


顔に水滴が落ちる。


突然、雨が降ってきた。勇人の血を洗い流すために降ったのか、勝利の女神が勇人の勝利に思わず嬉し泣きしたのか、それともその両方か、あるいはまったく違う理由なのか……。


「ああ……いってえ……くそ……あれ? 痛みが引いてきたな……さすが、頑丈が取り柄の体だ」


しかし、勇人は気づいていなかった。痛みが引いた理由を……。


「これで……みんなも…………大丈夫だな。兄さんも、今頃ほかの連中を叩きのめしている頃だろう」



「そういえば、旅行先は……沖縄だったな……僕は泳げないからあんまり行きたくないんだけどな……」



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