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プロローグ〜ハジマリノオワリ〜
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クナの表情が暗くなる。それは、あまり良くない、という事を表しているのだろう。

「むこうだ」

 小波は、琥珀たち一行を伴って、部屋の奥にある、もう一つの扉に向かった。それを先ほどと同じようにして開けた。


 部屋の中には簡素なベッドが置かれ、そこには琥珀の見慣れた、茶髪の青年が寝ていた。見間違えようもない。清文だ。

「清文っ!」

 ベッドのわきに駆け寄る琥珀。しかし清文は、目を開けるそぶりを見せない。身じろぎもしないまま、眠っている。

「……清文……?」
「一週間前にログアウトしてからこのままだ。全く目を覚まさない。意識すら取り戻さない事態だ。幸い、呼吸はしてるし、命に別状はないっぽい。唯ね……脳波が活性化したままだ。夢を見ている……と説明できれば簡単なんだけど……夢を見ているときに発せられる脳波じゃなくて、起きているときに発せられる脳波なんだよ。どうもね、彼の意識だけが起きて、どこかで活動してるっぽい――――俺達は、六門世界に取り残されたままなんじゃないか、と思っている」
「そんな……」

 それはつまり、体はログアウトして来ても心はログアウトしていない、という事だ。

「それだけじゃない――――これをみて」

 小波は清文に近づくと、その右の瞼をこじ開け、その中にある瞳を琥珀に見せた。

 清文の瞳は、()()色になっていた。もともとセモンの目は赤みがかった茶色だ。だが、こんな鮮やかな()()色ではなかったはずだ。いったい、何が……。

 その疑問を小波にぶつけようとしたその時だった。

「小波さん――――大変です!」

 研究員の一人と思しき青年が、部屋の中に転がり込んできた。

「何の様だい。人が寝てるっていうのに……」
「そんなことを言っている場合では……とにかく来てくださいッ!!」

 彼に言われるまま、一行は部屋を出る。その瞬間に、一瞬だけ清文の姿を見る。

「清文……絶対元に戻すからね」

 そしてあのモニターだらけの部屋に戻った琥珀を待っていたのは、奔走する研究員たちと、粘質の闇色で覆い尽くされた、モニターの画面だった。

「これは……」
「分からん。突然全ての映像がこれに切り替わった。……見ろ」

 いつの間にか小波の横にいた千場が、携帯端末を取り出して画面を見せる。そこも、同じ粘質の闇色に覆われていた。


 そして次の瞬間。世界の改革を告げる一言が、全世界の住民に向かって、語り出される。


『――――――――この世界に住まう、ありとあらゆる生きとし生けるモノに、宣言しよう』

 粘質の闇が消え去り、画面には一人の少女が映し出される。水底の様な綺麗な色の青い髪を持った少女だった。

「あいつは……」


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