20話
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同郷の人間であったとしても、私を裏切りませんか?』
偽りを許さないように、ラウネシアの双眸が真っ直ぐとボクを捉えていた。
ボクは一拍置いてから、ええ、と頷いた。
「ラウネシア。人は、人に対して慈しみ、愛し合う力があると言われています。でも、ボクはその力を持って生まれなかった。どこかに置き去りにしてしまった」
脳裡に、由香の言葉がリフレインする。
「ねえ、カナメ。君は人間に対して一種のディスコミュニケーションを引き起こしている。植物の心を直接読み取れるという特性が、君と植物を近づけた。でも、人の心は読めない。その差異が、人に対しての共感能力を著しく低下させている」
「その代わり、ボクは植物の心を読み取る事ができました。同じ人を異物のように感じて、植物だけの世界を夢想してきました」
だから、と自然に言葉が繋がった。
「帰還願望もありません。あの世界は、ボクがいるべき世界ではなかったのだと思います。同族に対して特別な感情はありません。ラウネシアに最後まで付き合うつもりです」
ラウネシアは僅かに、意外そうな顔を浮かべた。
『カナメは、自分を人ではなく植物に近しい存在と定儀づけているわけですか』
その問いには、すぐに答える事ができなかった。
ただ、頷いた。
「そうかもしれません」
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