20話
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ーでそれを猪に向かって放り投げた。
次の瞬間、激しい轟音とともに、空き缶が炸裂した。
閃光。平衡感覚が失われる。
咄嗟の事に身が竦み、防御行動に遅延が生じる。
呆然とするボクの耳に、猪の悲鳴じみた鳴き声が轟いた。
全ては一瞬だった。
由香が放った空き缶は爆発を起こし、猪の半身を吹き飛ばしていた。
「ねえ、カナメ。資格や申請が煩わしい散弾銃なんていらないんだよ。身近なものと、ちょっとした知識。それだけで、格上の生物を殺す事ができる」
焼けた臭いが、鼻をついた。
赤色の肉片が、緑色の自然と対照的なコントラストを描いていた。
「必要なのは、ちょっとした倫理能力の欠如。それだけで全てが変わる。必要なのは、本当にそれだけだ。システムは強大で、あるいは、とても脆い。そして、カナメ。システムが巨大化するほど、そのセキュリティは困難になる。私の言っている意味が、わかるよね、カナメ」
周囲にへばりついた肉片を背景に、由香は目を輝かせる。その双眸の向こうには、得体のしれない衝動が蠢いていた。
義務教育中の、最後の秋。
彼女は、とても美しく成長していた。
『カナメ?』
ラウネシアの思考を、ボクの感応能力が拾う。
思考の海から急速に浮上したボクは、反射的にラウネシアを見上げた。
「何ですか?」
『何を、考えているのですか』
「少し、昔の事を思い出していました」
そう言って、立ち上がる。
森中の樹々が、穏やかに光合成をしている。
戦争があったとは思えない程、穏やかな空間。
ここはとても、落ち着く。
食糧問題に関して、ボクは殆ど諦め始めていた。
ラウネシアの原型種という特性を考えれば、人間の食料となるものはラウネシアが独占していると考えても不自然ではない。
この森に、ラウネシアの果実以外の食料は存在しない。そう結論づけたボクは、無駄な散策を放棄していた。
そうなれば、自然とラウネシアの元で過ごす時間が増える。
ボクは特にやることもなく、ただ時間を過ごしていた。
亡蟲は、そのうち洗練されたドクトリンに辿り着くだろう。平行して航空部隊の有効活用もされ、ラウネシアの軍勢は不利な対面を強いられる。
その時に備え、ボクは既にラウネシアに一部の樹木の改良を頼んでいる。もう、ボクに出来る事は殆どない。
人間一人に戦争の行方を左右できるほどの力はない。ボクが目指すのは、戦術的勝利ではない。勝機はないに等しいけれど、相手の勝ち筋を崩す事だけを考えてなければ、どちみち勝利はありえない。
『カナメ』
ラウネシアが、ボクに語りかけてくる。
『敵の指揮官に相当する何かは、迷い人だと推測しましたね。カナメはもし、敵が
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