第二章
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「春よね」
「今の季節じゃなくて」
「カープがっていうのね」
「そう、春よ」
こうにこにことして言うのだった、ここでも。
「まさに春よ」
「カープの時代が来たっていうのね」
「そう言うのね」
「私が生まれる前だけれど」
まだ小学生の千佳がだ。
「黄金時代があったのよ」
「昭和よね」
「五十年代」
「そう、二連覇してね」
そしてだったというのだ。
「リーグ優勝合わせて六回優勝したのよ」
「それかなり前じゃない」
「私達が生まれる前よ」
「お父さんもお母さんもまだ子供だったでしょ」
「そんな頃よね」
「そう、そしてその春がね」
遂にというのだ。
「戻って来たのよ、今年カープ優勝するから」
「この調子でっていうのね」
「優勝するっていうのね」
「まずは憎むべき巨人を倒してね」
そしてというのだ。
「阪神には悪いけれど」
「あんた阪神は嫌いじゃないのね」
「アンチ巨人でも」
「ええ、阪神はね」
広島ファンでもだというのだ。
「実際嫌いじゃないから」
「だから阪神には悪いってなるのね」
「そこは」
「そう、けれどね」
それでもと言うのだった。
「優勝はね」
「それはっていうのね」
「カープなのね」
「広島東洋カープ」
「カープが優勝するっていうのね」
「いやあ、二十年以上優勝から遠ざかっていたけれど」
それが、というのだ。
「やっと終わってね」
「優勝するっていうのね」
「これから」
「それで交流戦もよ」
兄に言われたことをだ、ここでは自分から言うのだった。
「まあ見ていてね」
「そっちも勝つっていうのね」
「パ・リーグ相手にも」
「これまでは交流戦は嫌な思いしかしなかったけれど」
それでもだというのだ。
「見ていてね」
「そうなったらいいわね」
「私達阪神ファンだけれどカープは特に嫌いじゃないし」
「頑張ってね」
「健闘は祈るわ」
クラスメイト達は上機嫌の千佳をやれやれといった顔で見ていた、しかし千佳は上機嫌なままだった。鯉のぼりの季節は。
そうして交流戦を迎えた、はじまる直前にも家でこう言う千佳だった。
「楽しみよね」
「まだ言うのかよ」
寿は夕食の場で自分の向かい側で言う千佳に御飯を食べつつ顔を顰めさせて言った。二人の両親も一緒だ。
「カープのことを」
「言うわよ、まあとにかくね」
「交流戦もっていうんだな」
「阪神も頑張ってね」
勝者、トップの余裕で兄に言う、御飯をどんどん食べつつ。
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