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乱世の確率事象改変
二人の姫の叶わぬ願い
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 生来、孫仲謀――――蓮華は生真面目にして凡庸なタイプの人間である。
 有体に言えば普通。武の才も、智謀知略も、その心の在り方でさえそのあたりにいる程々の者達とさして変わらない。
 しかし一つ、彼女は特別なモノを持っていた。
 『孫呉の血』という受け継がれた血統。誰しもが期待を寄せ、誰しもが想いを馳せ、付き従わんと頭を垂れる……呪いにも似た宿命。生まれながらにして王というのは黄金で作られた檻に等しい。
 期待とは、責を全うせんとする者達にとっては自由を縛る鎖である。
 それを受けて尚、自由奔放に動くことの出来る彼女の姉は異質。応える才を持っているからこそ、平然と自身のままで過ごしていられる特別な人と言えよう。
 母と最も似ているのは姉で間違いない。わがままに、思うが儘、振り回して巻き込みながら人を導いていく……まさしく戦乱を駆ける王その一人。最前の先頭にて、皆を先導する英雄足るに相応しい。

 では蓮華は如何か。
 姉の存在の大きさから劣等感が刺激され、されども追い縋ろうと積み上げ、足掻き、もがき、苦しみ、血族の鎖がその身に食い込んでも、そうあれかしと願い続けて磨かれてきた王。
 彼女は既に理解している。自分は姉のようにはなれない、と。
 先に行われた劉備軍との戦で、彼女はまた一つ積み上げていた。
 黒麒麟に負けて叩きつけられた事実は、奮い立たせる事は出来ようとも、一人先頭に立って導くのは自分では無いという格たるモノ……それを再認識して、自身を支えてくれる者達がどういった存在かを本当の意味で理解した。
 気を失い、目を覚ました時にそれを実感出来たのは臣下の者達の涙から……では無く、敗走という屈辱を受けて尚、自分の無事を喜んでくれた兵士達のおかげであった。
 涙を零し、部下達と悔しさを分かち合った後、兵の前に姿を現せば、莫大な歓声によって迎えられたからこそ、その大切さに気付けた。
 王というのは、古来より受け継がれてきた在り方から、下々の者達に目が行く事は少ない。悪く言えば、ほぼ全ての高貴な血筋を持つもの達は上辺だけの心配や罪悪感を持つだけなのだ。
 だからこそ、桃香のように民の間に溶け込める王は異常。側に立つモノというのは希望の標になれる。
 白馬の王は、秋斗の小さな行いによってそれを民との間にも大きく足した。幾たびに渡る外敵からの防衛によって元よりあった民との絆を、草の根活動とも言える村長たちとの街改善の問答や、街や村々の視察によって強固に練り上げた。なればこそ、彼女は民が希望を向ける王になれた。
 負けた事によって、蓮華は民でもある兵の声を受けて、白蓮に近しく成長したと言える。絆を繋ぐとは如何な事であるのか、彼女はその身を掛けて黒麒麟に挑む事によって確立出来た。
 もう一つ、彼女は治世を継続させる王として必要なモノを
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