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乱世の確率事象改変
二人の姫の叶わぬ願い
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い。
 故に、亞莎は……

「中央、防衛主体鶴翼陣に切り替えろ! 紀霊隊は抜かせても構わないが、無理やり突破しようと来たならば多くの矢を去り際の贈り物にしてやれ! 右左翼部隊は抜かせるな! それと……本隊への極秘伝令、末姫への懐柔により内部離間計あり」

 敵の主要人物をどうするかを雪蓮達の判断に任せ、敵兵力を減らす道を選んだ。
 軍が徐々に動きを変えていく。鶴翼に切り替えた為に、中央の突破は直ぐにでも成るだろう。大量の弓兵によって、数を減らしながら、ではあるが。
 幾分か後、三つに分かれていた軍は紀霊隊に合流しようと中央に集まり出すも、明命と思春の部隊の対応によって即座に封じ込められた。
 紀霊隊は立ち止まる事もせず、突破後に全速力で戦場を離脱していった。一度だけ、亞莎に向けてにやりと気味の悪い笑みを向けて。
 疑問が浮かぶもほっと一息、亞莎は追撃の指示を出し、そのままこの戦場の制圧を試みる。

――取り残された袁術軍の兵達はもはや烏合の衆。数でも勝ってるから、敗残兵として投降を促して……

 思考を積み上げながら馬を進めて行く中で、戦場に嫌な空気が溢れかえった。
 兵達の悲鳴と怒声が大きくなった。怒りの気が満ち満ちて行く。

「呂蒙様! 甘寧様と周泰様が敵兵に投降を促し、ある程度の兵は武器を降ろしたのですが……こ、後方から大量の毒矢が放たれました! 幸い、お二人は無事ですが、兵達が激情に駆られ抑えが効きません!」
「なっ!」

 愕然。
 降伏すると思った矢先に攻撃を仕掛けてくるとは思いもよらなかった。
 だまし討ちをされて、ただでさえ長きに渡って耐え忍び、怒りを溜めこんでいた兵達が暴走しないわけが無かった。
 最前列は阿鼻叫喚の地獄絵図。思春や明命でさえ、兵達の怒りを鎮めるには足りなかった。否、命を狙われた側だからこそ、兵達から信頼が厚いからこそ、その怒りを抑え込ませられない。
 混乱は時間を追う毎に助長され、袁術軍の兵達はただ蹂躙されていくのみである。
 紀霊隊への追撃など夢のまた夢。ここでどれかの部隊を離脱させれば、掌握はさらに時間が掛かってしまう。
 亞莎はイレギュラーな事態に頭が真っ白になっていた。
 まだまだ経験が足りず、勝ち戦の後始末に対応しきれていなかった。
 掻き混ぜられた思考は最適の解を出すにも時間が掛かる。焦りながらも出来る限り不安を見せぬように目を細め、彼女はこの事態を収拾するために馬を走らせて行った。

 結局、混乱のままに武器を振るう袁術軍の兵と、怒りのままに動く孫呉の兵の激突が収まったのは、袁術軍の敗残兵が二割以下になってからだった。
 亞莎は今回の戦の終末を深く頭に刻み込み、先の乱世に向けてまた一つ階段を上った。
 ただ……これが紀霊の狙いであったと気付いた彼女
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