二人の姫の叶わぬ願い
[8/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、袁家側で和睦しようと提案すれば却下されるだけ。どちらにしろ手詰まりである事を、七乃や利九が分からぬはずも無い。
これはせいぜいが、苦しくなった時に助命嘆願をする為の保険程度にしか使えない。
考えて、亞莎はさらに戦慄する。
――袁術を殺すにしても殺さないにしても、どちらも不振の芽を育ててしまう。血族が貰った恩義を返さない不義理な輩に堕ちるわけだから、それこそ、これからの時代に諍いの芽を生み出してしまう。これはただ袁術を助ける為だけに用意された奇手……だというのに、全てを掻き回されてる……
七乃が仕掛けたたった一手によって、孫呉側が起こす行動の全てに制限を掛けられていた。
既に救出完了を知らせる早馬は送った後。到着次第、雪蓮は反旗を翻し、曹操軍と共に袁家討伐に向けて動き出すだろう。
ただ、救出の遅れによって曹操軍とは二度ほどぶつかっている。
次の早馬を飛ばしても間に合うのは確実ではあったが、救出の遅れによってただでさえ曹操軍との密盟に不穏な影を齎し、孫策軍の数が減っている事も加えて、主要人物を生かすという選択が許されるだろうか。
雪蓮は裏切りの汚名を被る事を既に呑んでいる。
しかし裏切りとは、それ相応の対処をしなければ周りに認められる事は無い。
揚州内部に噂を流し、思考の誘導を行っている現在、今回ほど大きな裏切りを起こすとなれば、袁術の頸は必須。従わなければどうなるのかを、服従を渋るであろう地方豪族たちに示す事は、これからの乱世に於いて得難き利であった。
見逃して貰える、生かして貰える……その事実が内部の腐敗を広げる要因となるのは誰の想像にも難くはない。
ぐっと、唇を噛みしめた亞莎は、いつの間にか深く入りすぎていた思考に気付いて、急いで戦場を見やった。
――やはり私達では紀霊は止めきれないのか。
三つに分けられた部隊による三面突撃が敵の戦略。一番激しい中央は利九自らが先頭にたって押し進んでいる。
袁術軍の中でも虎の子とされる紀霊隊の練度は頭一つ飛び抜けており、まだまだ練度が薄い自分達の兵では抜けられる事はもはや時間の問題である。
選択としては二つ。
この時に利九を討ち取る為に大量の兵を犠牲にしてでも抑え込むか、わざと抜かせて追撃を仕掛けながらじりじりと数を減らさせるか。小蓮の願いを無視して紀霊を殺すか、雪蓮達の判断に任せるか、とも言える。
利九を生け捕りにする事は、現状の将二人では不可能に近かった。救出後は討ち取るにせよ、逃がしたにせよ、そのまま建業に留まって蓮華と共に内部の掌握に動こうと決めていたから、街道や林道に生け捕りの罠を張る時間も足りていなかった。元から袁術、張勲、紀霊の三人は殺す気でいたのだから当然でもある。
小蓮の言い分の事実確認をするならば、利九もまだ殺せな
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ