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乱世の確率事象改変
二人の姫の叶わぬ願い
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た問題が亞莎の頭を悩ませる。

「お姉さまと話をさせて欲しいの! シャオは美羽と張勲と利九に助けられた。こうして無事なのはそのおかげだから……シャオを徐州の最前線まで送って! このままじゃ殺しちゃうでしょ!?」

 助け出され合流して直ぐにそう言い放った小蓮の言は、明命にも、思春にも、亞莎にも……信じられない事実だった。
 三人とも、小蓮が昔のままの笑顔で、お転婆なままで自分達と一緒に戦う、というような予想を立てていたのだ。
 人質に求めた側が、実は守っていたなどと、信じられるはずが無い。
 張勲のやり口に何度も煮え湯を飲まされてきたのは、他ならぬ自身の師である美周嬢。大陸でも指折りの軍師が警戒に警戒を重ね、幾千もの仲間の屍を築き上げ、夜も眠れぬほど悩み、不測の事態でさえ利用して辿り着いたのが今、この時。
 それほどの相手が、どうして孫呉側に得を齎すモノを寄越そうか。

『何か狙いがあるに違いない。幼い小蓮でさえ騙して、なんと悪辣な事か。長い時間を人質という籠鳥として過ごした小蓮を、敵は捻じ曲げたのだ』

 誰もが、そう思った。自分達と同じように、孫呉の繁栄を願っているのだと信じていたから。
 小蓮の言葉は届かない。小蓮の想いは決して伝わる事は無い。それほど、七乃の事を孫呉側は警戒していた。小蓮が救われたという事実も、袁家側の出来レースであると思考が縛られる。
 全てを知っている七乃からすれば間違いなく出来レース。しかし小蓮からしてみればどうかと考えれば、主観的に見ると、狙いがどうであれ守られた事に変わりは無い。
 たった一つ、小石程度の不可測は、孫呉を率いる主の懐に潜り込み、内部に亀裂を走らせる程の鋭い一手となっていた。
 青い髪の、常にニコニコしたその女を思い出して、亞莎はゾクリと肌が泡立った。

――救い出して、漸く皆で笑って暮らせるかと思った所に罠を張っていた。恐ろしい……否、得体がしれない。
 
 初めて怖いと思った。その女が軍師のように先を見て策を仕掛けているわけでは無いと知っている亞莎は、純粋に七乃に恐怖を抱いた。

――これは私達の作り上げるような策じゃ無い。

 亞莎にはそう見えた。
 軍師の作る策とは、欲しい結果の為に綿密に練り上げられ、幾多も対応を予測して成り得るモノ。

――今回のモノは全く違う。ただ単に、嫌がらせにしか思えない。

 ハッと息を呑んだ亞莎は、自身の考えに妙に納得した表情になった。
 亞莎の判断は正しかった。
 離間計になればいいな……そんな曖昧で適当な思考から生まれた嫌がらせ。目的とする所も、目標になる地点も決められていない……敵を困らせるだけの厭らしい一手であった。
 助け出された今、小蓮がいくら喚こうと孫呉の対応は変わらない。もし助け出せていなくても
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