二人の姫の叶わぬ願い
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跨り、自分の部隊が抜け出てくるのを待った。
そこかしこで未だに笛の音が鳴り響いている。いつ、どこから敵が攻めて来るのか分からない不安に駆られた袁術軍はもはや攪乱され、烏合の衆と化していた。
蓮華の瞳に昏い色が浮かぶ。
復讐の念は根強い。燃え盛る炎は心を焦がし、沸々と湧き上がってくる激情が身を染めそうになる。
ギシリと、拳を握りしめてそれを耐えて待つ事幾分、彼女の部下達が……逃げ惑う袁術軍の兵の間からこちらに向かってきた。
「よし、この地より引き上げ、建業の者達と合流する。孫呉の地を……取り戻す為に!」
合流同時に、兵達から雄叫びが上がる。その言葉を待っていたと言わんばかりに。
漸く……漸く望みが果たせるのだ。万感成就の夢を見て、随分長い間耐えてきた。それがやっと報われる。
兵達も、蓮華も、皆の心が一つだった。
今すぐ袁術軍の陣に攻め込んで叩き潰したいのもあったが、烏合の衆と言っても二万……さらには悪辣な袁家。それに構うよりも彼女は手堅く城を取る事を選んだ。
袁術軍の糧食や武器の被害を甚大に出来たのも大きかった。
――袁術と張勲は姉さま達に任せる。私達はいち早くこの地を手に入れよう。
歓喜と希望と信頼と覚悟を胸に、彼女は部隊を引き連れて闇夜の大地を進んで行った。早く妹に会いたい想いに逸りながら、部下を大いに褒めてやりたいと願いながら。
ただ、彼女はこの時知らなかった。
妹がどれほど心痛めているのかも、妹が敵を全く憎んでいない事も……そしてこの戦の終端に、自分の人生を左右するほどの出来事が待っている事も。
†
呆気ない……そう形容するには些か被害が出過ぎていた。まだ戦闘が始まったばかりだというのに。
紀霊率いる袁術軍二万を包囲していた亞莎達は、蓮華の到着を待ってから総攻撃を仕掛けるつもりだったのだが、それよりも前に袁術軍が城門を開いて突貫してきたのだ。
城を捨てる……袁術軍が取った判断は本隊の帰還待ちの籠城戦を選ばず、合流を選んだということ。
門が開いた時、やられた……とは思わなかった。
七乃と同様に、紀霊も袁術至上主義であると、孫呉の誰しもが認識していたからだ。その行動理由を忠義と取るか、それとも偏愛と取るのかは様々ではあるが。
亞莎は冷静に軍師として紀霊の狙いを看破しようと思考を巡らせる。
そのまま合流されては、小蓮救出の報せを聞いて反旗を翻す孫呉の本隊に被害が増えてしまうため、易々と抜けさせるというわけには行かない。
ここで紀霊を討ち取る事が最善ではあるが、そう出来ない理由もあった。
救出した小蓮から、内部の情報を聞くのは当然の事。小蓮にしても、家族の為なのだから秘匿すること無く喋っていた。
説明の中でただ一点、浮上し
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