暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
二人の姫の叶わぬ願い
[13/13]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
をたくさん殺して、疑ってばっかりで……もっとやり方はあったでしょ!?」

 流れる涙は止まらない。
 責め立てる言葉は正論。私達は小蓮を見て無さすぎた。彼女はまだ、幼い子供だったのに。
 私だって分かっている。
 誇りなど投げ捨てれば手を取り合う事も出来たかもしれない。犬のように媚び諂えば、求めるモノを与えられるカタチで手に入れられたかもしれない。
 それでも、私達はもう選んでしまった。

「お願いだから、美羽達を助けて! シャオはこれから絶対にわがままは言わないから! 一回だけ……わがままを……許してよぉ……」

 何度も胸を叩かれ、そのまま小蓮は腕の中で泣き出してしまった。
 私は何も言わない。もう決定は覆らない。否、覆さない。
 小蓮に憎まれる事になるだろう。一生許してくれないかもしれない。でも、私は……私である為に、妹の想いを切り捨てる。
 頭を撫でて、安心させてやれる言葉を話したくとも、すっと身体を離して、

「……っ。何処、行くの?」

 部屋の入口に歩みを進めた。

「姉さまの所へ。姉さまと一緒に袁術を……討ち取りに行く」
「やめてっ! 行かないでっ!」

 明命が駆け寄ろうとした小蓮を抱き止めた。暴れる身体を上手く極めているのだろう、小蓮は私の元には辿り着けなかった。

「嫌だっ! 殺さないで! 私の大切な友達を殺さないでよぉ!」
「甘寧、部隊を出せ。袁術と張勲は逃げ出すだろうから、必ず捕える為に徐州を広く監視せよ。呂蒙と周泰は建業の守りを任せる」
「……っ、御意」
「思春!? 信じてるからね……絶対に逃がして――――」
「いい加減にしろ小蓮!」

 怒声と共に振り返る。
 涙でぐちゃぐちゃになった顔で、小蓮はしゃくりあげながらも押し黙った。

「代わりに私が人質に行けば……よかったね。辛い思いをさせたのに傷つけてばかりで……ごめんね、シャオ」

 我慢出来ずに、本心を零した。
 謝る事もしたくなかったのに。許されたい為の自己満足のようで、自分の浅はかさに吐き気がした。
 振り返ると、泣き声が張り上がった。

「怨んで、憎んで……私はもう、ただのお姉ちゃんには戻れないから」

 誰に聞こえずともぽつりと零し、私は部屋を出た。
 頬を滴る涙は冷たい。誰を想っての涙か。小蓮と、きっと自分にだろう。
 心に宿る憎しみと怒りははち切れそうだった。

――私がこの手で引導を渡してやる。地獄に堕ちろ、袁家。

 決意を胸に、思春を従えて、私は虎の戦う戦場へと向かっていく。
 ただ……いつか妹とも笑い合える楽しい暮らしを送れるようにと……叶うはずも無い願いを祈ってしまった。


[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ