二人の姫の叶わぬ願い
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をたくさん殺して、疑ってばっかりで……もっとやり方はあったでしょ!?」
流れる涙は止まらない。
責め立てる言葉は正論。私達は小蓮を見て無さすぎた。彼女はまだ、幼い子供だったのに。
私だって分かっている。
誇りなど投げ捨てれば手を取り合う事も出来たかもしれない。犬のように媚び諂えば、求めるモノを与えられるカタチで手に入れられたかもしれない。
それでも、私達はもう選んでしまった。
「お願いだから、美羽達を助けて! シャオはこれから絶対にわがままは言わないから! 一回だけ……わがままを……許してよぉ……」
何度も胸を叩かれ、そのまま小蓮は腕の中で泣き出してしまった。
私は何も言わない。もう決定は覆らない。否、覆さない。
小蓮に憎まれる事になるだろう。一生許してくれないかもしれない。でも、私は……私である為に、妹の想いを切り捨てる。
頭を撫でて、安心させてやれる言葉を話したくとも、すっと身体を離して、
「……っ。何処、行くの?」
部屋の入口に歩みを進めた。
「姉さまの所へ。姉さまと一緒に袁術を……討ち取りに行く」
「やめてっ! 行かないでっ!」
明命が駆け寄ろうとした小蓮を抱き止めた。暴れる身体を上手く極めているのだろう、小蓮は私の元には辿り着けなかった。
「嫌だっ! 殺さないで! 私の大切な友達を殺さないでよぉ!」
「甘寧、部隊を出せ。袁術と張勲は逃げ出すだろうから、必ず捕える為に徐州を広く監視せよ。呂蒙と周泰は建業の守りを任せる」
「……っ、御意」
「思春!? 信じてるからね……絶対に逃がして――――」
「いい加減にしろ小蓮!」
怒声と共に振り返る。
涙でぐちゃぐちゃになった顔で、小蓮はしゃくりあげながらも押し黙った。
「代わりに私が人質に行けば……よかったね。辛い思いをさせたのに傷つけてばかりで……ごめんね、シャオ」
我慢出来ずに、本心を零した。
謝る事もしたくなかったのに。許されたい為の自己満足のようで、自分の浅はかさに吐き気がした。
振り返ると、泣き声が張り上がった。
「怨んで、憎んで……私はもう、ただのお姉ちゃんには戻れないから」
誰に聞こえずともぽつりと零し、私は部屋を出た。
頬を滴る涙は冷たい。誰を想っての涙か。小蓮と、きっと自分にだろう。
心に宿る憎しみと怒りははち切れそうだった。
――私がこの手で引導を渡してやる。地獄に堕ちろ、袁家。
決意を胸に、思春を従えて、私は虎の戦う戦場へと向かっていく。
ただ……いつか妹とも笑い合える楽しい暮らしを送れるようにと……叶うはずも無い願いを祈ってしまった。
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