二人の姫の叶わぬ願い
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ての責を優先するんだ……」
向けられる感情は怨嗟だった。私を責めていた。友を助けてくれない、『孫権』に憎しみを突き刺していた。
グッと腹に力を込めた。
例え妹の嘆願であろうとも、もう私の家族は血族だけではないが故に、愛しい小蓮を傷つけなければならない。
「私達に想いを託して死んでいった者達がたくさんいるのよ」
「……じゃあ美羽達に幸せになって欲しいって願ってた人たちの想いはどうなるのよ」
思いもよらぬ反論だった。
ふいに思い出されたのは、黒麒麟との戦だった。
同じような輩相手を踏み潰す覚悟も無いのか、戦争をしているというのに敵がどのようなモノかも分からずに戦っていたのか……あの時は、きっとそう言っていたのだ。
もう私はあの時から、乱世を生き抜いて、私達孫呉が平和を築いてみせようと決めている。小蓮の言葉に迷う事は無い。
「戦争とはそういうモノよ。袁術の頸を取らなければ不信を招いて、早い内の内部掌握は出来なくなる」
「たった三人を逃がすだけじゃないっ! 戦で見逃すくらい、お姉さま達なら出来るでしょ!?」
「なら聞くけど、この先、袁術達が再起して私達を攻めてきたらどうするの? 私達に心から服従する輩ばかりとは行かないのは自明の理。そういった輩を引き連れて、大きな敵と戦っている時に来られたら……また私達はこの地を失うことになるのよ?」
言いながら自分で笑いそうになった。
まさしく今、私達がしている事なのだ。孫呉の地をしっかりと治めるのに全力を尽くすのは間違いなくても、万が一という事も考えなければならない。それを怠ったから袁術達は追い詰められている。
奴等の二の舞にならない為にも、反乱分子の芽を叩き潰して、先の世のしっかりとした安定を選ぶ事こそが王の務め。
裏切りを是とするなど、王としては間違いだ。
小蓮は言葉に詰まった。
私の言いたい事が分かったのだろう。
「小蓮、私達は戦争をしているの。欲しい物の為に多くの命を対価に使って優しい世の中を作り出そうとしているの。それは袁術だって、張勲だって、紀霊だってある意味で同じでしょう。舞台に上がったモノは須らく死と隣合わせになる」
「だ、だからって……そうだ! お姉さまは大徳って呼ばれてるでしょ? だったら美羽達を見逃せばもっともっと名声が上がって――――」
「聞き分けなさい、小蓮」
揺れる瞳をそのままに、どうにか助けようと言葉を繋いでいた小蓮にぴしゃりと言い放った。
眉を寄せ、慄く唇から浅い息を吐きだし、小蓮はボロボロと涙を零し始める。
「出来ないよっ! 美羽は悪くない! だって……だってシャオは楽しかったもん! 初めて対等に遊べる友達だったんだもん! お姉さまも、お姉ちゃんも、皆だって孫呉の地ばっかりに捉われて、人
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