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Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
黒守黎慈とフェンサー(1) ─信頼のカタチ─
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ちに救いを与えたくて。

 彼らの命に意味を与えたくて。

 あの人と旅をするのは自分の幸福のため。
 世界を巡って人助けをするのは自分への贖罪のため。

 ……とまあ大層な御託を並べつつも、結局はそれらも自分の為でしかないのだ。

 自分勝手で我儘な理屈だが、何をどうしたところで他人の事など分かるはずもない。
 自分の世界は自分の中だけで完結しているのだから、周りなど気にせず自分が正しいと思ったことをすべきだ。

 これもあの人からの受け売り。

 極端な考えというか信条だが、人間として最も確かな生き方だ。
 そう思えば私も、彼にかなり感化されているのだなとつくづく思う。

「ふうん…………やっぱり、アナタにも話しておこうかな」
「……何を?」
「私がここに来た理由の一つ。これはアイツにも話したことなんだけど」

 初めて彼女の顔が魔術師としての貌に変わった。

 今までは古馴染みとして雑談に興じているだけだった。
 それがこうまで表情を変えて語り出すということは、余程な内容なのか。

 少しの緊張感に身を強張らせながら、彼女の次の言葉を待つ。

「私の家系に残された宿題っていうのも、ようやく手が届き始めたんだけどね。その過程で、私は一つの終わりを視てしまったのよ」
「……………………」
「とある人物を原点とし、中心点として広がる、世界分枝線上の因果律の分岐から収束まで。
 つまり、無限に連なる並行世界の事象観測の果てを」

 胸の鼓動が何かを訴える。





 聞いてはいけない、知らない方がいい。

 そんな嫌な予感に身を震わせつつも、彼女の話を止めることが出来ない。
 彼女はこちらのことなど気にせず、たとえ解っていても話を止めることなどしないだろう。

 そうして続く言葉は──────

 ──────私にとって、最悪の答えを提示していた。





 黒守黎慈という存在は。

 無限に存在するどの世界線軸上であろうとも。

 必ずイリヤスフィール・フォン・アインツベルンという因果によって、逃れられない死を迎えるのだということを。

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