暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第二部
聖杯戦争、始動
黒守黎慈とフェンサー(1) ─信頼のカタチ─
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わ」
「…………あーはいはい、そうですね。あなたが上で俺が悪ぅございましたー」

 どんだけガチなんだよ。俺も大概負けず嫌いだがコイツも相当だ。
 マスターとサーヴァントは似た者同士とは言っても、ここまで負けず嫌いで張り合ってどうすんだ。

「…………」
「?」

 もういい。不貞寝ぶっかますことに決めた。
 興が醒めたし疲れたし、なんかどーでもよくなってきた。

 隣の兄ちゃん、下らないことで騒いでてゴメンな。

「あぁ〜、この硬いベッドも今は心地いい…………」
「ちょっと、せめて食器を片付けてからになさいな」
「zzz…………」
「うわ、寝るのはやっ!?」















「はぁ……黙って後始末をするなんて、私ってなんて健気なサーヴァント」
「────────」
「…………ホントに寝てるのね。思わず突っ込んでくれそうなコト口走ってみたんだけど」

 動かした机を部屋の中央よりに戻す。どけた小物類を記憶の限り元の配置に片付ける。
 後は汚れた食器を台所に運んで、とりあえず後始末っぽいものは終わりだ。

 ついさっきまで争い合っていた原因である空腹は確かにあったが、一度霊体に戻って実体化すれば肉体の状態は初期化(ノーマライズ)されるので特に問題はない。

 サーヴァントに食事や睡眠が必要ないのは当然で、私がなるべく実体化していたがっているのはちょっとした拘りからだ。
 このような身になってからは滅多に感じられなくなった五感、自らが人であった頃の名残を感じていたいから。

 戦時中の今は常に主を守るため睡眠を取ることは出来ないが、人として大切な要素である食事くらいは楽しみたいだけ。

 そんな私のワガママをレイジが許容する必要など、99%無いと言える。
 残りの1%はまぁなんていうか、そのあたりを認めてくれる寛容さを期待して……といったところ。

「……………………」

 一応、食器や鍋を洗い始める。
 無意識にも出来る単純作業を行いながら、頭を埋めていく思考を止めることはしない。



 無駄なモノを嫌い、効率化を優先するのが魔術師の性質である。
 どこまで徹底するかは個人の主義にも依るが、サーヴァントに食事を与えるどころか意思の疎通さえ必要ないと断じるマスターもいるだろう。

「だからこれは、ただの私の甘え」

 生前の人格まで再現する、聖杯戦争の召喚システムの弊害。

 私が私であるからこそ生まれた、私の余分だ。



 洗って拭き終わった食器を棚に戻し、鍋を収納スペースに戻そうとして──────

『フェンサーの分』

 ────そんな紙が置かれた、ラップのされたビーフストロガノフのお皿があった
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