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蒟蒻打法
第二章
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「こうしたフォームだとね」
「打てないのね」
「そうなのね」
「そう、多分ね」 
 真似てみてから言うのだった。
「そういうのは無理よ」
「まあね、変わったフォームだしね」
「それで打てる人もいるだろうけれど」
 その梨田然りだ、この辺りは個人差だ。
「けれど美希ちゃんには合わないわね」
「スマートな方がいいわね」
「私もそう思うわ」
 美希はまた自分から言った。
「だからこのフォームはしないでね」
「これまで通りね」
「そうしていくのね」
「そうしていくから」
 こうした話を部活の前に部室の中でしてだった、そうして。
 美希は部活に励んだ、そしてその時だった。
 顧問の臼井源太先生、白くなった髪の毛がすっかり減ってしまいいつも眠そうな目をしている定年間近の男の先生だ。肩も少し落ちてきていて首もがくんと下がろうとしている。
 その全体的に老け込んでいる先生がだ、こう部員達に話したのだ。
「皆守備はいいから」
「守備はですね」
「いいんですね」
「エラーも少ないし反応もいいし肩もいい」
 まずは個々の技量からの話だ。
「それに連携もいい。走ることも」
「じゃあ打つ方ですね」
 美希がここで先生に言ってきた。
「それですね」
「そう、気になるのは」
 ここでだ、先生は一人の部員を見た。その娘は黒髪をショートにしている小柄な娘だ、童顔ではっきりとした大きな目をしている。部の正捕手である興梠美麗だ。
 その美麗にだ、先生は言ったのである。
「興梠さん、もっとね」
「打たないと駄目ですね」
「その肩とキャッチングはいいから」
 キャッチャーとしての能力はいいというのだ。
「リードも勉強してくれていていいけれど」
「そっちですね」
「タイミングを掴めていないかな」
 それが問題ではないかというのだ。
「だからもっとね」
「タイミングを合わせてですね」
「そう、身体が固いかな」
 それでボールとのタイミングが合っていないのではないかというのだ。
「だからそこをどうにかすれば」
「そうですか」
「少し考えてみれば」
 いいとだ、先生はその美麗に話す。
「九番でも打つと打たないじゃ全然違うから」
「わかりました」
 美麗は先生の言葉に俯いて答えた、その辺りは自信がない感じだった。
 それでその日から美麗はこれまで以上に練習、バッティングの方にも励んだ。とにかく素振りをしまくった、だが。
 それでもだった、動きが固くボールにタイミングが合わず。
 打てなかった、バットにボールが当たらないのだ。これではどうしようもなかった。
 その彼女を見て部員達もだ、心配する顔で言うのだった。
「キャッチャーとして頑張ってくれてるからね」
「正直正捕手はあの娘しかいないけれど」

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