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飾りじゃないのよ涙は
第二章
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「いい人だったわね」
「せめて苦しまずに死ねてな」
「よかったわね」
「全くだ」
 兄弟も泣いている、お父さんの兄弟姉妹もその人達の家族も。
 皆泣いていた、けれど私だけは。
 泣いていなかった、お父さんはその私を見てこう言った。
「やっぱり強いな、御前は」
「泣かないから?」
「ああ、強いな」
 皮肉ではなく心からそう思っての言葉だった。
「本当にな」
「そうなのね」
「御前みたいな強い娘が娘だとな」
 どうかとだ、父は泣きながらもしみじみとして言ってくる。
「親父も嬉しいだろうな」
「女の子も強くないとね」
 母も言う、やはり泣きながら。
「駄目だからね」
「全くだ、これからも強いままでな」
「いようね」
 二人でこう話す、兄弟も親族の人達も皆私を見てその強さに感服している顔だった、けれど。
 私は一人になったところで泣いた、真夜中になって皆寝静まってから。
 お祖父ちゃんの柩の前で泣いた。声もなく泣き崩れた。
 それが本当の私だった、少しでも悲しい本や漫画を読んでも涙が出る。けれどそれを他の誰かに見せることはしない、それだけなのだ。
 私はすぐ泣く、けれどそれは誰も見ていないだけなのだ、だから彼氏も私に笑顔でこう言うのだった。
「俺に何かあっても泣くなよ」
「死んでも?」
「ああ、何があってもな。というかな」
 言いながらだ、彼は自分で言葉を変えてきた。
「御前は泣かないか」
「そう言うのね」
「絶対にな、それはないな」
 こう言うのだった、笑って。
 彼は本等に私を誰よりも強いと思っていた、それでこんなことを言ったのだ。
 それで笑っていた、けれど。
 彼は学校から家に帰ってコンビニに行くのにバイクに乗っていて事故を起こした、カーブを曲がり損ねて壁にぶつかってしまったのだ。
 危ない、そう聞いてだった。
 私はその話を家で聞いた、携帯で女友達から聞いた。
 それで家にいる家族にこのことを話してそれでこう告げた。
「彼氏が事故を起こしたから」
「危ないの?」
「そうらしいわ」
 こう母に話す、二階の自分の部屋から一階の台所で夕食を作っている母に。
「だから今からね」
「病院に行くのね」
「どの病院かは聞いたわ」
 その女友達からだ。
「だからね」
「すぐに行ってきなさい」
「ええ」
 表情を変えず淡々と告げた、そして。
 私は自転車で病院に向かった、それも全速力で。
 病院に入っても息を切らしながら彼氏のことを尋ねた、急患ですぐに手術室に担ぎ込まれたらしい。安否はというと。
「わからないんですか」
「はい、まだ」
 そうだとだ、受付のナースさんが答えてくれた。
「わからないです」
「そうですか」
「ただ、もう手術ははじまっていて」

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