終焉
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ぞ。知ってたか?」
「知ってるわアホ。知らんヤツがどこにいんだ」
自然と故郷の話し方になってしまう。
「うはは!冗談だ冗談」
「まったく。で?いったいこんな時に何のようだ?」
「おう。それがな、これからあの悪魔のアジトの真下行ってみんか?て誘うおうと思ってな。どうだ、行かんか?」
悪魔は東京の中野駅上空に空中要塞を造っていた。
「別に構わんが、今すぐか?」
「当たり前だろ!時間がねえ。もう俺は着いてるから、早くな!」
「お前ってヤツは…」
私は身支度をし、家を出た。そのまま行こうかと思ったが立ち止まり、我が家を目に焼き付けておくことにした。
家を買ったのは32才の頃、竜司の親父さんが土地を譲ってくれたのだ。よって、東京のど真ん中に一軒家持つことになった。あの頃は娘や妻のために働くのだと張り切っていたものだった。
数年後に娘が嫁に行き、広くなったなどと妻と話しつつ老後を考えるようになり、時々娘が孫を連れてくるのがこの上なく楽しみになっていた。
今孫たちや娘はどうしているだろうか。連絡を取ろうかと思ったがやめた。妻のようになっていないとも限らないのだ。それに、孫たちの声を聞いてどうするというのか。意味のないことだ。
家を見ているじぶんはその無意味なことしているのかもしれない。待っているあいつのためにも、もう行かなければな。私は足早に家をあとにした。
中野駅まではそうかからなかった。だいたい歩いて1時間ほどの距離だった。すぐに竜司を探し始めたが、これはなかなかに骨の折れる作業だった。というもの駅には大勢の人がごった返しており、祭り状態であったためである。おそらく世界中から人が集まっているのだろう。何語ともわからない声がいたるところから聞こえる。
「おーい!たくちゃーん!!」
むこうから見つけてくれたようだ。
「おう、竜司。少しばかり時間がかかったな、すまん」
「大丈夫だよ、時間はまだある」
残り二時間だった。
「で、なんで来ようと思ったんだ?」
「んあ?ただ見に来ただけだけど?」
「お前らしいな」
しばらく沈黙したあと、私が口を開いた。
「虫や動物達を俺たちって自分勝手に絶滅させたりしてきたよな」
「…そうだな」
「あっちの都合なんか考えずにさ。そう考えると、なんか納得しちゃうんだよな」
「なにが?」
「今度は俺たちが虫けらみたいに殺されても文句言えねえんじゃねえかってな」
少し間が空き、竜司が応える。
「俺はそうは思わねえけど」
「…」
「弱けりゃ負ける。支配されて、食われて、色々だ。でもな、文句言ったり抵抗したりってのは誰だってするもんだし、していいんだよ。たまたま今まで人間の勝ち越しだっただけでさ。人間は力がある者として自然なことをしてたんだと思う」
「そうかい」
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