34,赤鼻のトナカイ
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俺は段々と、あれがキリトなのかの確信が持てなくなってきた。
まるで、人の姿をしたモンスターが暴れているかのような原始的な暴力。
キリトは、俺達の目の前で何度も何度も吹き飛ばされた。
そして、何度も立ち上がって数値的な痛みを回復結晶で無くし、再び剣を振りかざして走りだす。
「なんだ……あれ」
言葉が出て来ない。こんな戦い方を俺は知らない。いや、認めたくないのだ。
敵の攻撃を受け、吹き飛ばされることによるクーリングタイムの時間稼ぎと回復。全体重を預けたソードスキル。言葉の上では、それが戦闘テクニックとは分かっている。
だけど、それはあくまでもシステム上の話だ――黒一色の防具からポリゴンが見え隠れするあの様を、誰が全回復と呼べるのだろう?
「オオオオオォォォォォ」
誰のものかも知れない雄叫びが、綺麗な月夜に木霊する。
俺は、ただ、その様を眺めることしか出来なかった。
結局、1時間も経たぬうちに<背信教ニコラス>は跪いた。
【イベントボスが撃破されました。イベントボスが撃破されました。】
クリスマスイベントの終了アナウンスが全域へと拡散されていく。それに伴って、クラインがワープゾーンから飛んできた。
「おい。三人共、無事かよ!?」
「生きてるよ」
それを勝利と呼ぶはずなのに、全く喜べやしない。命知らずなプレイイングをしていた俺ですら、あり得ないと思うほどの捨て身プレイだった。
キリトの手から剣がスルリと抜け落ちる。剣は地面へと突き刺さること無く霧散し、同時にボスの巨体も砕け散った。代わりに、ニコラスが後生大事に抱えていた蛇尾袋だけが、その場へと転がっている。
ふらふらしながらも、キリトが袋へと近づき、封印となっている真紅のリボンを手で引きちぎった。袋からは思いっ切り振ったコーラみたいにアイテムが次から次へと噴き出した。
早い者勝ちなのか? という疑問は噴水の頂点を見て納得した。アイテムのオブジェクト化は頂点で解け、そこからは小さな水飛沫の様に戦闘参加者のアイテムポーチへと降り注いでくる。急いでアイテムポーチを開けると、既に容量は限界ギリギリだ。
「どこだ……どこだ……」
キリトの呟きへのリアクションはゼロ。俺もアルゴも自身のアイテム欄を整理するのに必死だった。大量に入手したアイテムはどれも最前線で使える一級品。いちいちステータスをチェックしたい衝動を抑えつつリストを捲っていくと、
「――あった」
目当てのアイテムは俺の取得リストの中に確かに存在した。
「クロちゃん、本当にカ?」
「確かか? 間違いないか?」
「マジかよ。おい、俺にも見せろ」
三人が眼の色を変えてコチラに迫ってくる。アイテムウィンドウを可視化して見せてやろうかと思ったが、既のとこ
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