34,赤鼻のトナカイ
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を聞こえなく出来る。それがホンの数秒のことでも背教者は両目を手で覆い、スキルをキャンセルさせられた。
連撃を重ねようと予備の短剣を抜こうとした所で、背後にチクリと嫌な感触がした。
本能のままに右へとステップした瞬間、自分がいた場所にあったのは一本の剣だった。
漆黒の切っ先が、刀身がその場を通り過ぎ、鍔と柄を経て、同じ色の使い手がその場を突進していく。遅れて響くジェット戦闘機めいた爆音。
単発重攻撃スキル<ヴォーパルストライク>、背教者の巨体ですら後方へと吹き飛ばすその威力は、俺みたいなAGI頼みのプレイヤーだったら一撃でHP0になりかねない。
「キリト、お前――」
思わず、キリトに詰め寄ろうとした所で、硬直がとけたキリトが腰を落とすのが見えた。
視線の先を見ると、アレほどの一撃を与えたにもかかわらず、重斧を振り上げた背教者がこちらに飛び込んでくる。
キリトを狙った一撃は積もっていた白雪を大きく巻き上げた。
視界の悪さに後退し、短剣をクイックチェンジで交換する。一瞬の光の瞬きの後、磨きたての刀身は月明かりを受け、キラリと輝いた。
「クロちゃん、無事なのカ?」
「俺は、問題ねぇよ。俺はな」
雪は煙のようにもくもくと立ち込め続ける。
少しずつ、舞い上がっていた雪が収まってきたところで、再び轟音と共に雪が舞い上がり、鋭い風切り音と共にさらに上空へと飛翔する。
終わりの見えない繰り返しの後、雪煙の中からプレイヤーが文字通り吹き飛んできた。
身に纏った黒いマントは肩口の辺りが大きく切り裂け、デジタルデータの空虚な内部を露出している。
キリトの頭の上のゲージはすでに、レッドに変わっていた。
しかし、吹き飛ばされるのを逆に利用して射程外に逃れたキリトは素早くポーチから回復結晶を使うと、そのゲージは一瞬で青へと変化する。
「おおおおおおおお」
剣を地面へと突き刺し、喉が張り裂けそうな唸り声が木霊する。
弾丸のようにまた突き進んでいくキリトは緩慢な振りの斧を避け、返す刀でニコラスの右腕を大きく切り裂いた。
空中でさらに体を曲げて追い討ちの<閃打>を放ち、クーリングタイムなどお構いなしに剣を振りかぶろうとする。
対するニコラスも切り裂かれた腕など気にもせず大斧を薙いだ。
空中で交差する二つの得物が均衡したのはホンの一瞬、次の瞬間にはキリトはスーパーボールのように地面をワンバウンド、そのまま雪原の中へと打ち付けられた。
直撃ではないとはいえ、あれはヤバイ。助けようと走り出す俺はしかし、たったの数歩で立ち止まった。
視線の先で、キリトはまるで何事も無かったかのように跳ね起き、先程よりも苛烈な剣檄を叩き込んでいく。
その様は、俺が知っているどんなモンスターよりも機械的で荒々しい。
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