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渦巻く滄海 紅き空 【上】
三十四 病棟密会
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に告げられ、男は有難そうに書類を手元に掻き集める。
窓際に佇みその所作を眺めていたナルトが「恋人がいたよな?それも暗部……」と何気なく訊ねた。今一度手元を覗き込んだ男が頷いたのを確認して、矢継ぎ早に問いかける。
「表か?裏か?」
「表ですよ」
男の返答にナルトは聊か思案をめぐらせた。考えを纏めている彼の前で、男がゴホッと咳を漏らす。

「どうした?」
「ちょっと風邪気味でしてね…ゴホッ」
「それだけじゃないだろう?」
口元に不敵な笑みを浮かべる。同様に男もまた口角を吊り上げた。
尽く白に囲まれた病棟の一室で、同じような面構えをした二人は互いに笑い合う。決して病院には似つかわしくない、ふてぶてしいほどの表情を彼らは浮かべていた。


やがて開け放たれた窓から入って来た風がカーテンを大きく揺るがせる。白い波が引く頃には、ナルトの姿はとうに無かった。




訪問者がいた事など微塵も感じさせない窓辺を男は静かに見遣る。ナルトがいた痕跡を探すように暫し視線を泳がせた彼は、ついと目についた一輪の百合に笑みを浮かべた。
「敵わないな…」
瞳を閉じる。花の黄色と、それ以上に輝く金の髪が瞼の裏にいつまでも焼け付いていた。



月光ハヤテの病室で一際鮮やかに咲き誇る百合の花言葉は――――――『あなたは私を騙せない』。

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