三十四 病棟密会
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界の端に入った黄色に瞳を瞬かせた。
何時の間に活けられたのだろうか。水差し横で凛と咲き誇る一輪の百合。一輪挿しにされた百合を一瞬まじまじと見た男は、ふっと皮肉げに苦笑する。
「君に隠し事は出来ませんね」
男の言葉を聞き取れなかったのか、ナルトは窓枠に腰掛けたまま、懐から取り出したモノを無造作に投げる。
波打つ白のシーツ上にころころと転がった紺色の巻物が、その中身を曝け出した。
「まさか前回の中忍試験で使われた『地の書』を使うとは思わなかったよ」
催眠の術式が施されていたはずの巻物。今や白紙であるソレをベッド上に広げ、ナルトは嘆息を漏らした。
「俺が木ノ葉の里に帰って来た…いや、砂と音が密会していた夜。自分で自分にその巻物の術を掛けたんだろう?」
確認の言葉を投げつけられ、男は沈黙を持ってそれに答えた。
巻物の術式によって五日間眠り続けたのがなによりの証拠だ。余談だが今回の中忍試験で使われた巻物が足りないのは、七班を襲い、『天の書』を燃やした大蛇丸が原因である。
「あの夜の事は他言するな。もっとも、したくても出来ないだろうが」
「勿論。こちらとしても都合が悪いですしね」
有無を言わさぬ強い口調に圧され、男はこくこくと頷きを返した。反応を確かめるかの如く、青い瞳がじっと男の顔を覗き込む。ややあっておもむろにナルトは口を開いた。
「それで…彼本人はどうした?」
やや声を落として、問われる。嘘を吐く事など許さぬ、氷の如き冷やかな視線が男の身を貫いた。
重苦しい沈黙が病室に満たされる。病院傍の演習場から聞こえてくる子どもの笑い声が、同じ子どもであるはずのナルトの存在を一層不気味にさせていた。
「彼は既に、」
「本当だな」
子どもらしからぬ抑揚の無い声が病棟の白い壁に吸い込まれてゆく。男は唾を呑み込もうとしたが、咽喉は渇きに渇いていたため痛みを訴えただけだった。
再び訪れた静寂の中、ボッと軽い音が響き渡る。五日間眠っていた故に気怠かった男の全身が弾かれるように跳び上がった。
男の眼前に広がっていた巻物が突然発火している。青より濃い紺にも拘らず炎の青に巻かれ、燃え尽くされる『地の書』。青い炎は空で燃え上がり、巻物だけを消失させた。シーツは以前同様白いままで、焦げ跡一つ見当たらない。
次いで男の前に、数枚の書類が投げて寄越された。直前の出来事に呆然としている彼に構わず、ナルトが淡々と話す。
「それらの中身を全部頭に叩き込め。全て憶えたら燃やせ」
「………これはッ!?」
書類に目を通した男の顔が引き締められる。改めてナルトを振り仰いだ彼は「想定済みだったという事ですか…?」と讃嘆の眼差しで訊ねた。
「まさか。『地の書』を見て初めて確信したよ」
だがその情報は必要だろう?と暗
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