三十四 病棟密会
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どうかしら〜」
口籠りながらもしっかり商売魂を燃やす。いのが勧める花を視界に捉えながら、ナルトは申し訳なさげに頭を振った。
「すまない。どの花を買うかは、もう決めてあるんだ」
何の迷いもなく二輪の花を手にとる。見舞いには不向きなそれらに、いのの眉が秘かに顰められた。しかしながら否定する想いを抑え、彼女はナルトの顔をまじまじと見る。
どこか謎めいた印象を受けるこの少年は、この花の花言葉を知らないのだろうか。
しかしながら既に代金を受け取ったため(まあいいか…)と自分を納得させ、いのはその花を一輪ずつ包んだ。綺麗に包み終えたそれを手渡すと、その花の香りにナルトの頬が微かに緩む。
それがあまりにも。あまりにも透明で儚い微笑だったので、いのは一瞬言葉を失った。
「ありがとう。それから俺のことはナルトでいいよ」
穏やかな笑顔でお礼を述べられる。気づいた時には、ぽつんと一人でいのは立ち竦んでいた。店内にも前の通りにも彼の姿はどこにもない。
(夢、じゃないわよね〜)
店中で花々が咲き誇る中。咽返るほど強い芳香が漂っているにも拘らず、先ほどナルトが持ち帰った花の甘い香りが仄かに残っていた。
「まさか頭が口寄せされるとはのォ…」
木ノ葉病院の屋上。壁に背を預け、腕組みをしていた自来也は、傍らの手摺をちらりと見遣った。彼の視線の先には、手摺上にちょこんと乗っている一匹の蛙。
自来也に頭と呼ばれたその蛙―フカサクは、どこか楽しげに目を細めた。
「いきなり妙な所に呼び出すもんやからてっきりまた自来也ちゃんかと思うたが…。まさか九尾の人柱力やとはのう」
自来也の師であり、二大仙蝦蟇の一人であるフカサク。あの崖からの墜落など物ともしない実力者なのだが、流石に突然の落下には反応出来なかった。また俄かには信じ難いが、自身を口寄せしたらしい少女の必死さに、咄嗟の判断が遅れたというのもある。
だが彼女が己を庇おうとしていたのはよく理解していた。
「しかし四代目の娘が今や自来也ちゃんの弟子か…。これも運命かのう」
しみじみと感慨深げに呟くフカサクの言葉に、こつこつと腕を叩いていた自来也の人差指が動きを止めた。腕組みをしたままフカサクを横目で見る。
「よもや頭はあの子が、よげ…」
「そこまでは言っとらん。だが、面白い子じゃ」
自来也の言いたい事を即座に推し量り、言葉を遮る。そしてフカサクは唐突に重大な一言を告げた。
「というわけで、自来也ちゃん。ナルちゃんの修行は暫くワシが見る」
「………はぁあ?」
師の突拍子も無い一言に、自来也の目が点になる。愕然とした表情を浮かべる弟子を尻目に、フカサクは言葉を続けた。
「あの子には恩がある。崖から落ちるワシを助けようとした恩がの。
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