第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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を吸った、北欧神話において『何物にも殺せぬ光の神を殺した矢』を思わせた少年の顔を、思い出していた……
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――暗い、昏い……まるで、海の底のようだ。
辟易するように、その夢を見る。窮極の宇宙の神苑、踊り狂う異形の神々。その吹き鳴らすか細いフルートと、くぐもった太鼓の単調な旋律と韻律。
背後には、想像する事すらも赦されない深奥。己を抱くように混沌の玉座に微睡むそれは、盲目にして白痴なる神王。聞くに耐えない冒涜の言辞を喚き散らす、邪神の■■――――
――何を、莫迦な。こんなものは、夢だ。夢以外であるものか――――
視界の端に映る『それ』を、見えはしても考えない。理解すれば、恐らく正気では居られない。
そう……灰色の世界だ。代わり映えのせぬ、ただ徒労の世界。死ぬ為に生きる、何の意味も無く摩耗する。最早、幻想のヴェールが剥がされ尽くした、なんの面白味もない無味乾燥にして無色透明、ただただそんな世界で――――
――やめろ。やめろ、やめろやめろやめろ! 理解するな、理解するな理解するな理解するな……俺には分からない。分からない、分からない分からない分からない!
視界の端の破滅そのものが、僅かに身動ぎする。漸く気付いたのだ、己に捧げられた『生け贄』に。
息を殺して身を潜め、必死にこの永劫の刹那をやり過ごそうとしていた……哀れな、小さきものを。
――夢だ。夢だ、夢だ夢だ夢だ! 見えない。見えない、見えない見えない見えない! そんな筈はない。そんな筈はないそんな筈はないそんな筈はない、あんな――――
狂気を帯びた異形の神々の舞が、更に悋気を帯びる。知性など無いままに生け贄を妬み、嫉み、怨み、憎み。
『何故、貴様が』と。『何故、貴様だけが』と。『お前も』、『お前も狂え』と。フルートを、太鼓を掻き鳴らしながら――――
――ああ……月が。手を差し伸べるように、狂ったように嘲笑う、黄金の望月が見える――――
………………
…………
……
目を開く。軋むような頭痛が、意識を無理矢理に覚醒させる。着替える事もなく、倒れ込んだ姿のまま。忌々しく、胸元の『輝く捻れ双角錐』を睨む。紅い線の走る、禍々しい黒の扁平多面体を。
まだ体に残る、二日酔いの後のような『消沈』のルーンの残滓を振り払うように頭を振って。気を取り直して時計を見れば、時刻は午後七時丁度。這いずるように部屋に辿り着いたのが午後四時だ、約三時間の間、玄関先で泥のように寝ていた事になる。
「クソッタレ……覚えてやがれ、十字教徒……!」
携帯が、鳴り響いている。だがそれは、アラームではなく着信音。しかも――――
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